第145回直木賞を受賞した池井戸潤氏の『下町ロケット』(小学館)。2008~2009年に『週刊ポスト』に連載された同作は受賞に先駆けてWOWOWでのドラマ化が決定。過日、池井戸氏は仕事の合間をぬって、撮影現場へ陣中見舞いに訪れた。
現場ではキーマンのひとり、弁護士役の女優・寺島しのぶとの初対面も果たした。原作では男性弁護士の設定だが、凛とした寺島の佇まいに「このまま法廷に立っていそう。非常にはまっている」と絶賛。「こんなことなら、最初から女性にしておけばよかったかな」とのコメントも。
「小説とは正反対の映像アプローチを見ることは、同じクリエーターとして新鮮です。ドラマならではの、面白さを期待しています」
映像の迫力を賞賛する一方、小説のアプローチは、目には見えない人間の心情描写にあると語る。
「僕自身にとって小説とは、“人を描く”ということ。そして自分が読みたいと思う小説を書いている。『下町ロケット』も、そのひとつです」
子供の頃からミステリーやエンターテインメント小説が大好きだった。少年時代の夢を叶え、人気作家となった現在も変わらず、小説を愛する心が原動力だと語る。原稿を執筆しながら感動し、泣くこともあるそうだ。
自らが純粋に作品を楽しんでいるからこそ、池井戸氏の小説は人々の心を深く揺さぶるのだろう。
撮影■丹羽敏通
※週刊ポスト2011年8月5日号