竹下正己弁護士の法律相談コーナー。今回は「中古車購入を解約するのに違約金を請求されました。クーリングオフはできないのでしょうか?」と、以下のような質問が寄せられた。
【質問】
中古車販売店でよさそうな車を見つけたので、ハンドルの取り換えとオーディオなどの整備を依頼し、申込金として3万円を払いました。ですが、家族から大反対されたため、解約を申し出たところ、20%の違約金を払うようにいわれました。このような場合、クーリングオフはできないのでしょうか。
【回答】
クーリングオフとは、相手方の責任の有無を問わず、一方的にいったん契約した申し込みを取り消したり、解除することを認める異例の扱いとして、法律に基づき一定の条件下でできることです。
このクーリングオフができる取引は、【1】特定商取引法の規制を受ける訪問販売(9条)や通信販売(15条の2)、【2】割賦販売法による訪問販売などの取引のクレジット契約(35条の3の10)、【3】宅建業者が売主である場合の不動産の訪問販売(宅建業法37条の2)、【4】自宅などで契約する保険契約(保険業法309条)などです。
先物取引など、他にもクーリングオフ制度が導入されていますが、いずれも慎重さを欠きがちな取引から消費者を守るための制度です。いい換えれば、こうした心配のない取引、例えばご質問のように店まで出向いて物色して取引に応じるような場合であれば、熟慮した上でのことでしょうから、クーリングオフなどで保護されません。
同様に、慎重な交渉を経て契約に至るはずの取引は、たとえ訪問販売であっても、政令でクーリングオフの対象から除外されます。自動車の売買の場合もそうです。
以上のように、あなたの場合は、クーリングオフできませんが、消費者契約に該当します。例えば自動車の性能・品質など購入決断を左右する重要事項に関して、店側の説明に誤りがあったような場合には取り消しも可能です。また契約書で、購入者からの契約の解除を認めていて、違約金を20%と規定しているという場合には、その損害額が平均的な損害を超えていれば、その超えた部分は無効です。
ご質問の場合、申し込んですぐに解除すれば、取り換え部品の手配は別にして、それ以上の損害が出るかどうかは疑問です。専門家の助言を受けて交渉すべきです。
※週刊ポスト2011年8月5日号