セックスとは全く異なる快感を男性に賦与したといわれる革命的アダルトグッズ「TENGA」。その製造現場は、企業秘密保持のためほとんど公開されてこなかったが、内部成形の秘密工場に取材が許された。“性の秘密兵器”の製造現場の現場リポートを紹介しよう。
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その工場は別棟で、キャップとマスクのほか白衣と工場内専用の靴を着用し、エアシャワーを浴びなければ入室できない。「TENGA」の松本元一社長は分厚い胸板をぐいと張った。
「食品加工場なみの“クラス10000”という、1立方メートルに粒径0.5マイクロm以上のチリやゴミが1万個以下のクリーンルームになっています。ちなみに、普通の室内ならチリやゴミの数は無限大、空気清浄機を入れマメに掃除をしている部屋でも30万個以上のチリが浮遊しています」
冷却の済んだエラストマーは5cmで長さ40cm整えられ、成型機へ投入された。マシンの中で再加熱と成型を行なう。テンガのユニークでさまざまな形状は、オリジナルの金型によって形づくられていく。
1台3000万円近いという特注マシンの傍らでは、白装束に身を固めた女性スタッフが黙々と作業していた。金型からプルンとしたゲルを剥がし、丹念にチェックする。検査は気泡や剥離、へこみの有無、肉厚など細部にわたり、妥協を許さない。
レポート/増田晶文(作家)
※週刊ポスト2011年8月5日号