国内

福島原発 周囲気遣い「辛い」と言えず熱中症になる作業員も

 連日のように酷暑が続き、福島第一原発(1F)では作業員が熱中症で運ばれるケースが相次いでいる。作業員として原発に潜入したフリーライターの鈴木智彦氏が、作業員たちがおかれている事情をこう説明する。

 * * *
 1Fは世界的にみても類例のない特殊な状況だ。そのため現場の作業員には臨機応変に対処するよう、何度も繰り返し指導される。が、作業員たちに訊いてみると、具体的な場面を想定しにくいので混乱するという。一瞬でリスクを計算し、判断できる作業員は少ないらしい。

 安全優先を周知・徹底させるため、作業員の休憩所のあちこちに熱中症予防の注意書きが貼られるようになった。現場監督は誰もが、自分の班から熱中症で倒れる作業員を出さないよう気を配っているはずだ。それでも、熱中症は作業員の「具合が悪い。休みたい」という自己申告だけが頼りだから、注意書き程度では抜本的な安全対策とはいえない。

「トイレさえ、車に乗ってシェルターに戻り、すべての作業着を脱ぎ捨てなきゃいけない。再びあの重装備を着込むなど時間的ロスが多いため、どうしても作業員は『つらい』という言葉を飲み込んでしまう。

 同僚に迷惑をかけたくないと考え、少々の苦痛は我慢しようとするのが一番危険なんで、メーカーは口酸っぱく『少しでも危険と思ったときは、すぐに申し出て下さい』と訴えているけど、集団作業だから、やっぱり自分を後回しにしちゃう人が大半だ」(とあるメーカーの安全管理担当)

 あと少し動けば作業が一段落する……といったケースで無理は生まれやすい。自覚症状、自己申告がなくても、第三者が強制的に休みを取らせるような体制を作らない限り、熱中症患者はゼロにならない。

※週刊ポスト2011年8月5日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

4月14日夜、さいたま市桜区のマンションで女子高校生の手柄玲奈さん(15)が刺殺された
「血だらけで逃げようとしたのか…」手柄玲奈さん(15)刺殺現場に残っていた“1キロ以上続く血痕”と住民が聞いた「この辺りで聞いたことのない声」【さいたま市・女子高生刺殺】
NEWSポストセブン
ファンから心配の声が相次ぐジャスティン・ビーバー(dpa/時事通信フォト)
《ハイ状態では…?》ジャスティン・ビーバー(31)が投稿した家を燃やすアニメ動画で騒然、激変ビジュアルや相次ぐ“奇行”に心配する声続出
NEWSポストセブン
NHK朝の連続テレビ小説「あんぱん」で初の朝ドラ出演を果たしたソニン(時事通信フォト)
《朝ドラ初出演のソニン(42)》「毎日涙と鼻血が…」裸エプロンCDジャケットと陵辱される女子高生役を経て再ブレイクを果たした“並々ならぬプロ意識”と“ハチキン根性”
NEWSポストセブン
山口組も大谷のプレーに関心を寄せているようだ(司組長の写真は時事通信)
〈山口組が大谷翔平を「日本人の誇り」と称賛〉機関紙で見せた司忍組長の「銀色着物姿」 83歳のお祝いに届いた大量の胡蝶蘭
NEWSポストセブン
20年ぶりの万博で”桜”のリンクコーデを披露された天皇皇后両陛下(2025年4月、大阪府・大阪市。撮影/JMPA) 
皇后雅子さまが大阪・関西万博の開幕日にご登場 20年ぶりの万博で見せられた晴れやかな笑顔と”桜”のリンクコーデ
NEWSポストセブン
朝ドラ『あんぱん』に出演中の竹野内豊
【朝ドラ『あんぱん』でも好演】時代に合わせてアップデートする竹野内豊、癒しと信頼を感じさせ、好感度も信頼度もバツグン
女性セブン
中居正広氏の兄が複雑な胸の内を明かした
《実兄が夜空の下で独白》騒動後に中居正広氏が送った“2言だけのメール文面”と、性暴力が認定された弟への“揺るぎない信頼”「趣味が合うんだよね、ヤンキーに憧れた世代だから」
NEWSポストセブン
高校時代の広末涼子。歌手デビューした年に紅白出場(1997年撮影)
《事故直前にヒロスエでーす》広末涼子さんに見られた“奇行”にフィフィが感じる「当時の“芸能界”という異常な環境」「世間から要請されたプレッシャー」
NEWSポストセブン
天皇皇后両陛下は秋篠宮ご夫妻とともに会場内を視察された(2025年4月、大阪府・大阪市。撮影/JMPA) 
《藤原紀香が出迎え》皇后雅子さま、大阪・関西万博をご視察 “アクティブ”イメージのブルーグレーのパンツススーツ姿 
NEWSポストセブン
2024年末に第一子妊娠を発表した真美子さんと大谷
《大谷翔平の遠征中に…》目撃された真美子さん「ゆったり服」「愛犬とポルシェでお出かけ」近況 有力視される産院の「超豪華サービス」
NEWSポストセブン
中居正広氏の兄が複雑な胸の内を明かした
【独自】「弟がやったことだと思えない…」中居正広氏“最愛の実兄”が独白30分 中居氏が語っていた「僕はもう一回、2人の兄と両親の家族5人で住んでみたい」
NEWSポストセブン
『傷だらけの天使』出演当時を振り返る水谷豊
【放送から50年】水谷豊が語る『傷だらけの天使』 リーゼントにこだわった理由と独特の口調「アニキ~」の原点
週刊ポスト