連日のように酷暑が続き、福島第一原発(1F)では作業員が熱中症で運ばれるケースが相次いでいる。作業員として原発に潜入したフリーライターの鈴木智彦氏が、作業員たちがおかれている事情をこう説明する。
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1Fは世界的にみても類例のない特殊な状況だ。そのため現場の作業員には臨機応変に対処するよう、何度も繰り返し指導される。が、作業員たちに訊いてみると、具体的な場面を想定しにくいので混乱するという。一瞬でリスクを計算し、判断できる作業員は少ないらしい。
安全優先を周知・徹底させるため、作業員の休憩所のあちこちに熱中症予防の注意書きが貼られるようになった。現場監督は誰もが、自分の班から熱中症で倒れる作業員を出さないよう気を配っているはずだ。それでも、熱中症は作業員の「具合が悪い。休みたい」という自己申告だけが頼りだから、注意書き程度では抜本的な安全対策とはいえない。
「トイレさえ、車に乗ってシェルターに戻り、すべての作業着を脱ぎ捨てなきゃいけない。再びあの重装備を着込むなど時間的ロスが多いため、どうしても作業員は『つらい』という言葉を飲み込んでしまう。
同僚に迷惑をかけたくないと考え、少々の苦痛は我慢しようとするのが一番危険なんで、メーカーは口酸っぱく『少しでも危険と思ったときは、すぐに申し出て下さい』と訴えているけど、集団作業だから、やっぱり自分を後回しにしちゃう人が大半だ」(とあるメーカーの安全管理担当)
あと少し動けば作業が一段落する……といったケースで無理は生まれやすい。自覚症状、自己申告がなくても、第三者が強制的に休みを取らせるような体制を作らない限り、熱中症患者はゼロにならない。
※週刊ポスト2011年8月5日号