白澤卓二氏は、1958年生まれ。順天堂大学大学院医学研究科・加齢制御医学講座教授。アンチエイジングの第一人者として、著書やテレビ出演も多数の白澤氏が、「女性と男性の平均寿命の差」について衝撃的なデータを紹介する。
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日本は1983年に世界一の長寿国になって以来、現在もその地位を維持している。2009年の日本の平均寿命は男性79.59歳、女性86.44歳で、男女差は6.85歳、女性は約7歳男性より長生きしている。
しかし、日本で初めて国勢調査が行なわれた1920年から1925年の平均寿命は男性42.06歳、女性43.20歳と1.14歳の男女差しかなかった。平均寿命の男女差はまさしく20世紀の産物といえる。
一方、世界の国々の寿命の男女差を見てみると、米国5.5歳、フランス7.5歳、イギリス4.9歳、中国3.7歳、インド1.4歳、ロシア12.4歳と各国で様々。最も平均寿命の男女差が大きい国ロシアは、男女差が最も開いた1994年には寿命の男女差は13.6歳に拡大した。
その当時のロシアの男性の寿命の低下の原因は、心臓病の増加による死亡率の上昇であるといわれている。また、国民レベルで見たアルコール消費の増加もこのトレンドに関与しているといわれている。
一方、疫学統計が明らかになっている範囲では、男女の寿命差が最も少ない国はバングラデシュ。バングラデシュにおける2003年度の男性と女性の平均寿命は両者とも62.6歳で、男女差はない。
最近、米国アイオワ州立大学の研究チームはヒト以外の7種類3000体の霊長類の寿命を比較・検討し科学誌『ネイチャー』に報告した。一般に雄の方が短命であることが霊長類の寿命の共通点であったが、このことは雄間の配偶行動における競合、つまり雄による雌の獲得競争に関連することが分かった。
実際、そうした競争が認められないムリキというサルでは、雄と雌の寿命に差を認めない。霊長類では競合的社会を生き延びなければならない雄はそのために寿命を縮めている可能性が示唆されている。
※週刊ポスト2011年8月5日号