SF作家の草分けで、ベストセラー『日本沈没』などを著した小松左京氏が、7月26日に亡くなった。80歳だった。そんな小松氏は、1995年、阪神大震災直後のインタビューで、日本における巨大地震の恐怖についてこう語っていた。(週刊ポスト1995年2月3日号より)
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実は、私は昭和48年に書いた『日本沈没』のなかで、マグニチュード7.6級の直下型地震によって退社ラッシュの時間帯に、高速道路の高架が傾いて、車が次々と落下して炎上するという表現をしたんです。もちろん昭和39年前後、首都高速が一部開通し、名神高速も開通したずっと後のことです。
この小説を発売した後、ある大学教授に呼ばれましてね。そこで「キミは高架の建築基準を知らないのかね。高速道路が傾くわけないだろう」といわれたんですよ。
確かに、その頃は、そうなのかなとも思ったし、映画化された時には、シーンにならなかったくらいなんです。ところが、今回の地震(阪神大震災)では、傾くどころか、完全に横倒しになってしまった。SFより現実の方がはるかに上回ったわけです。
日本はスペースが狭い。地価が高いということになると効率よく利用するために、立体交差するか地下を潜らせるしかない。そうすると、工期や費用の面から高架にする方が都合がいいわけです。
確かに高架は経済的にみて効率的ですが、今、もう一度考え直す機会がきたんじゃないでしょうか。
『日本沈没』の中に出てくる関西大震災では、震源地は六甲山ということになっていましたが、現実に地震を体験すると、絶望的になりますよ。日本は、本当に危ない。日本沈没はありえないにしても、どこで地震が起こっても不思議じゃない。