国内

原発事故で欠陥露呈のマスコミ 社員は受験点取り虫ばかり

 新聞・テレビは、私たち国民が知りたいことをわかりやすく報じているのだろうか。東日本大震災、福島第一原発事故後、メディアから流れてくるのは、「ただちに健康に影響はありません」「確認中です」等々、国民を不安がらせる官僚用語の垂れ流しばかりではないか、とエッセイストの神足裕司(こうたり・ゆうじ)氏は指摘する。

 * * *
 テレビ・新聞メディアの原発事故報道は、わけがわからず、気分を暗くする毒薬にしかならなかった。

 いつも「言論の自由」と声高に言いながら、もっとも大事な地震後の1か月、政治と同じく、大メディアは国民を守らなかったし、極秘情報をもとに家族だけを関西方面へ避難させる“放射能インサイダー”のような輩もいた。

 私たちは放射能に汚染されているのかいないのか? 政府もメディアも信用できない。

 官邸、文部科学省、経済産業省の原子力委員会、東京電力が二重三重の記者発表をしてますます混乱が深まる中、福島第一原発3号機はプルサーマル、すなわちウランとプルトニウムをMOX燃料として使う、人類最悪の猛毒施設ではないかとの世間話がざわざわと流れた。

 これを打ち消すように大メディアが流したのは、「プルトニウムの放射能は紙一枚で防げる」という事実ではあっても冗談のような発表だった。放射能汚染を少なめに発言すれば「御用学者」と非難された。だが、風評被害を広めた学者不信にも、メディア側の致命的な伝達力不足がある。

「御用学者」と罵倒された人も含め、専門家に取材した筆者、コータリがたどり着いた答えは、放射能漏れは危険レベルでも安全レベルでもないというものだ。つまり、ほとんどわからないということだ。

 放射能は遺伝子を破壊する。また細胞を破壊することによって人体にストレスを与える。この両者によって、一度に大量被曝すれば重大な症状が出る。原爆後の広島市爆心地付近へ入って紫の斑点を出しながら亡くなった兵士のようなケースだ。一方、同じ線量を浴びても、長い年月をかけたものであれば影響はわかりにくい。部分的に破壊された遺伝子は自己修復するからだ。これは理論だ。

 では実際、国が定める基準値以上の放射能を浴びるとどうなるかは、わからない。なにを素人がと言われようが、学者が拠り所にする被曝データは広島、長崎、チェルノブイリのわずかなものしかないからだ。

 はっきり言うべきではないか。放射能被曝と人体への影響は、細かい数値で本当らしく説明するほどにはわかっていないのだと。

 ここで、メディアの別の欠陥がわかってくる。出世競争にともなう政治家との癒着以外に、スタッフが受験戦争を勝ち抜いた点取り虫しかいないことだ。

「わからない」とは口が裂けても言わない。知識の欠落を疑われれば、無関係なデータを並べて相手を翻弄しようとする。同じく点取り屋でメディアよりは少し偏差値が高い官僚のやり口と一緒だ。

 原発事故後の新聞紙面を見ればいい。原子炉の図解があり、放射線表があり、あらゆる専門家のコメントがあり、それでいて、とっくの昔にメルトダウンしていた事実を伝えるのは後回し。

 あとは個々人が判断するしかないって? わかりにくい隠蔽競争をしておいて、判断などできるか?

 お分かりでしょう。ニュース記事や番組が何を伝えているのかわからなかったのはあなただけではない。書いたり、しゃべったりしている当のマスメディアが、悲しいほどにわかっていなかったのだ。

※SAPIO 2011年8月3日号

関連記事

トピックス

希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
NASAが発表したアルテミス計画の宇宙服のデザイン(写真=AP/AFLO)
《日本人が月に降り立つ日は間近》月面探査最前線、JAXA「SLIM」とNASA「アルテミス計画」で日本の存在感が増大 インドとの共同計画や一般企業の取り組みも
週刊ポスト
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト