ライフ

小松左京氏 阪神大震災時のTVによるヘリ空撮に疑問抱いてた

 SF作家の草分けで、ベストセラー『日本沈没』などを著した小松左京氏が、7月26日に亡くなった。80歳だった。そんな小松氏は、1995年、阪神大震災直後のインタビューで、首都圏で大地震が起こった場合どうなるか、そのシミュレーションを語っていた。(週刊ポスト1995年2月3日号より)

 * * *
 今回(阪神大震災)と同程度の地震が東京を襲ったとしたら、どうなっていたでしょうか。

 関西に比べ防災体制は整っているとはいえ、今回は神戸の高速道路の崩壊やウォーターフロントでの液状化現象など、起きないだろうといわれていたことが、すべて現実に起きてしまった。これでは従来のシミュレーションをやり直す必要が出てきたのではないでしょうか。

 なぜビルが倒れたのか、なぜ大火が発生して延焼が食い止められなかったのか。問題はたくさんあります。防災シミュレーションは、今回のような貴重な体験が生かされなければなりません。

 たとえば、報道にしても、今回は全体の被害状況、具体的な被災地、被災者の実態などがリアルタイムで伝えられるというそれなりの功績はありました。その反面、現場の状況をヘリで空撮したり、生き埋めの救出作業を実況するばかりで、自動車がどの経路を迂回すればいいのかとか、どの地域にはどこを行けばいいのか、避難所はどこかといった情報が伝えられない問題点があった。ワイドショー化したテレビの欠点が露呈した形になりました。

 もちろん、現場の状況がリアルタイムで伝えられることで、ヤジ馬を極力少なくすることができるなど、混乱を抑える効果はあったわけで、精力的に報道が行なわれた点は評価できます。

 しかし、それも配給権のある東京のキー局が、災害で壊滅状態になった場合、果たして今回のような報道姿勢を地方局でとれるか。これも整備されるべき点でしょう。

 わたしの作品の中に『首都消失』というのがありますが、これは東京一極集中に対して問題提起したもので、通常国会会期中に東京が完全にブラックアウト(交通・通信不能)になったらどうなるか、というものでした。

 小説の中では、大阪の万博跡地の迎賓館に、全国知事会議を招集して臨時政府を置くという設定でしたが、実際、今回のような地震が首都圏を襲い、首都機能がマヒしたらどうなるのでしょうか?

 金融にしても、関西の地震で北浜の証券取引所での立ち合いが中止され、その影響が為替、相場に反映する。それが東京ならどうなるか。また、皇室問題はどうなる、などさまざまなケースが想定できます。あらゆる意味でのシミュレーションが必要でしょう。

関連記事

トピックス

10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
宇宙飛行士で京都大学大学院総合生存学館(思修館)特定教授の土井隆雄氏
《アポロ11号月面着陸から55年》宇宙飛行士・土井隆雄さんが語る、人類が再び月を目指す意義 「地球の外に活動領域を広げていくことは、人類の進歩にとって必然」
週刊ポスト
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン