かつて『微笑』『新鮮』という女性誌があった。性を赤裸々に語った女性誌のさきがけとして知られ、「ウーマン・リブ」をリードした存在としても知られるが、どんなエピソードがあったのか。作家の山藤章一郎氏が同誌に掲載された「婚姻費用算定表」など、「女性の独立」と同誌の関連について報告する。
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タテ軸に夫の年収、ヨコに妻の年収――。夫婦のみ、子1人から2人、3人、さらに子どもが0歳から14歳、15歳から19歳と分けた一目瞭然の表はなにか見当がつきますか。
離婚をしたときの「有無を言わさぬ」〈婚姻費用算定〉の表です。たとえば中学生と小学生の子がふたりいる。妻はパートで125万円働いている。夫の年収は750万円。するとタテとヨコの交わる数字は14万円から16万円と出てくる。これを〈婚費〉といいます。
家裁で離婚調停員に四の五のいっても通じない。離婚したら払わなければならないと決まっている額です。同様に〈養育費算定表〉というものもある。このケースだと約12万円。
高収入の妻が支払う例もないではないが、圧倒的に男が支払う。合わせて幾らになるか。計算しなくても恐ろしい。これに、いま住んでいるマンションのローンが残っている。これの返済がある。
しかも自分が新しい部屋に移ると家賃がかかる。小遣いどころではない。生活していけない悲惨が待つ。2003年にこの算定表ができた。
「男は死ぬまで上手に利用する」〈東京家族ラボ〉を主宰する家族問題評論家・池内ひろ美氏の意見。
「別居、離婚を申し立てる妻が増えたきっかけは、その〈婚費算定表〉と〈年金受給権分割〉です。
ほかにも、女を擁護する法律がこの5~6年でどんどん作られてきました。決していいことではありません。私はアンチフェミニです。日本でいま女性差別なんてないんです。私たちより上の世代は男女平等を教えられ、男と戦って男よりエラクなろうとした。これは可愛くない女です。これが〈ウーマン・リブ〉とつながっているんです。
私たちの世代はジュリアナで遊んだり、男の利用の仕方を知ってました。あなたが大事よって。そうすると男はがんがん働いてくれる。男を死ぬまで上手に利用できるんです。これがいちばん賢い女です。
妻たちのイメージする別居や離婚はおカネはいまのまま、夫だけいなくなってくれるというものです。しかし離婚して妻もお金持ちになるわけではない。大変な損失が起きます。私、相談にくる奥様がたにいうんです。貧乏がイヤか夫がイヤか決めなさいと」
わずか40年のあいだに、〈婚費表〉に表わされる男と女の立場はここまで激変した。
※週刊ポスト2011年8月5日号