ベストセラー『日本沈没』で知られる作家の小松左京氏が7月26日に肺炎のため亡くなった。80歳だった。小松氏は2008年にそれまでの作家生活を回顧した『小松左京自伝』を出版、その際にインタビューに答え『日本沈没』などの創作秘話を明かしていた。(週刊ポスト2008年3月28日号より)
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初長編小説『日本アパッチ族』(1964年)では、〈社会のくずといわれた連中が、くずであるがゆえに超人間的な存在になるという構想〉をブラックなユーモアに仕立てた。
同年発表の『復活の日』では人類社会、『日本沈没』(1973年)では日本を滅亡させ、前者では架空の細菌兵器の弱点を最新の学説のもとに割り出し、後者では当時13万円した12桁の電卓で日本列島の“重さ”を計算した。
「細部をつめないと、安心して書き出せないんだね。日本を丸ごと沈めちゃうなんて、世が世なら治安維持法違反で逮捕だもの(笑い)。あのとき僕は夜逃げも覚悟したのに、右翼1件、左翼から2件抗議の電話があっただけで、拍子抜けした。
実はあの小説で日本国民が批難するオーストラリアは、僕の夜逃げ先として調べた場所だったんだ(笑い)」
●構成/橋本紀子