女同士だからわかり合える、でも女同士だから嫌な部分も見えてしまう…。母と息子、父と息子や娘という関係ではわからない、“母と娘”には特別な愛憎が潜んでいる。さまざまな関係性を持ついまどきの母と娘の間柄について、いくつかのケースから検証した。
こんなケースがある。カズコさん(32才)は、2年前に妊娠し、5才年下の男性と結婚した。20代の夫は経済的に不安定、しかも仕事の都合で帰宅はいつも深夜だったため、カズコさんは結婚当初から、夫とともに自分の実家で暮らすことにした。
「うちは60才の母親と3つ上の姉、父親の4人家族。母親も働いているので、姉が家事全般を引き受けているんです。私も娘を出産後は仕事復帰したいと思っていたので、実家なら好都合。母も姉もいるから、私が仕事でも子供の面倒は見てくれるし、面倒な家事もしなくて済みます」
出産後しばらくは、母親に育児を教えてもらいながらカズコさんも子育てに集中し、半年後に仕事に復帰してからは、母、姉、カズコさんの3人が協力して育児を行っていた。
そして、同居から10か月――カズコさんは離婚を決めた。
「私の実家だから彼も居づらかったのでしょうね。だけど、私にとっては30年以上も一緒に暮らしてきた実家だし、夫と暮らすよりもベテラン主婦である母親が側にいるほうが何かと好都合なので、後悔はありません」(カズコさん)
娘がすべての判断を母親に委ねたり、夫よりも母親を“好都合”と選ぶことは、はたから見ると「いきすぎなのでは?」と思えなくもない。
「母と娘がお互いに頼り、頼られる関係は、当事者同士が生きづらさを感じていないなら、一概に悪いとはいえません。ただし、母親が愛情のように見せながら娘を支配し、娘が悩んでしまうケースもあります」
と女性ライフサイクル研究所の臨床心理士である西順子さんは指摘する。例えば、次のようなケースだ。
外資系金融会社で働くヨウコさん(39才)は、幼いころから勉強もスポーツもできる優秀な子供で、母親の自慢だった。
「母は“これからは女の子も学歴よ。自分の未来は自分の力で切り開いていかないと、私みたいに専業主婦になると大変よ”と呪文のようにいってました。だから、私も頑張って、いまでは年収1500万円です。でも、30才を過ぎるころから“結婚しないの? 子供が産めなくなるよ”としつこくて」(ヨウコさん)
4年前に父親が他界してからは特にうるさく、ヨウコさんの暮らすマンションにも勝手にやってきて、掃除や洗濯をするので困っているという。
「どうやら介護やお墓の心配までしているみたいで。“お金ならあるから介護はきちんとプロにやってもらうから大丈夫”なんていうと、“冷たい娘だ”と号泣するし。このままでは、本当に“墓守娘”になってしまいそうで怖いです」
このように娘を縛りつけ、しまいには墓守まで娘にやってほしいと願う母と、そんな母に対して息苦しさを感じながらも「ノー」とはいえない娘という関係が“墓守娘”と注目されたのは数年前。
※女性セブン2011年8月11日号