7月19日、上行結腸がんによる肺炎のために亡くなった原田芳雄さん(享年71)について、女優・松田美由紀(49)は目を細め、ときおり愛おしむように話し始めた。
原田さんが亡くなった日、美由紀はすぐさま原田家に駆けつけた。そこは、いつもと変わらぬ原田家の風景があった。
「餅つきで集まってるときと同じ感覚でした。みんな、ワイワイ飲んでるし。芳雄さんの遺体がここにあるのに。最初は“いったい何?”って思って泣き崩れてしまったんです。
でも、みんながこうやっていつも集まれることが当たり前になっていたけど、芳雄さんが私たちにしてくれていたことは当たり前のことじゃなかったんだと、そのとき初めて気づいたんです。どんなときでも分け隔てなく家族のように接してくれるなんて、そんな人はいませんよ。芳雄さんは、黙ってそういうことをしてくれてたんだなと思って…」(美由紀)
“最後に残るのは人間関係しかない。家族関係とは必ずしも血縁に限らない”と生前、語っていた原田さん。この日の原田家の風景こそが、優作さんが憧れた原田さんの生き方そのものだった。
美由紀は息子たちに、“ふたりの父”の思いを受け継いでほしかった。が、次男・松田翔太(25)にとって、原田さんの死は、あまりに大きく、母、美由紀に、こういったという。「あんなに痩せ細った芳雄さんを見るのが、つらすぎて(葬儀に)行きたくない」
その言葉を聞いた美由紀は、翔太を厳しく叱った。「あんた、そうじゃないよ! 芳雄さんの魂がもらえるから会いに行きなさい」
愛する人を野辺に送る――それは確かにつらいことではあるが、愛する人ゆえにその“旅立ち”をしっかりと目に焼きつけ、その人の生き様を胸に刻みつけておくことの大切さは、美由紀自身がとうに体験していることでもある。それゆえに、子供たちにもみずから野辺送りをすることの大切さを教えたかったに違いない。
母の忠告を受け、原田さんを送った後、翔太はこういって微笑んだという。「母さん、やっぱりパワーをもらったよ」
ふたりの父の生き様は、そのとき翔太にしっかりと受け継がれた。
※女性セブン2011年8月11日号