プロ野球のロッテ・阪神、米大リーグのヤンキースなどで活躍した伊良部秀輝氏が、7月27日、米ロサンゼルス近郊の自宅で亡くなった。42歳だった。そんな伊良部氏が日本で最後に在籍したのが阪神タイガース。当時、伊良部氏にインタビューした元巨人の投手・橋本清氏は、こうリポートしていた。そしてこの年、阪神は18年ぶりの優勝を果たす。(週刊ポスト2003年4月11日号より)
* * *
「阪神での環境はむちゃくちゃエエよ。なにしろ自由に調整させてもらってるし、星野監督がオレとの約束を守って、すべてをオレに任せてくれているからね」
ストッパーでやってもらいたいという星野監督に対して先発を申し出た伊良部。
「中6日なら120球は投げられます。たとえ10敗することになっても、5回まではゲームを作る自信があるので、その負けは決して無駄な負けではありません」
そう直訴して先発ローテーション入りを果たしたといっていた。また、星野監督は伊良部を信じ、試合を任せている。この信頼関係が伊良部の好成績に繋がっている。
「星野監督ほどの熱血監督はメジャーにもおらんで。昨年も血圧が上がりすぎてシーズン中2回倒れたそうやけど、この前の緊急ミーティングの時でも、血圧を測りながらやっとるんやで。毎日、血圧を測りながら、そこまで野球にのめりこめる監督と一緒にやれるということは幸運という他ない。それに……」
と伊良部は表情を緩めてこういった。
「甲子園の歓声は本当に力になる。オレは投げとって、こんなに幸せでエエんかなと思ってしまうほどや。オレは今、阪神で一番楽しんで野球をやっとるんとちゃうか?」