高校生のスポーツの祭典「全国高校総体」(インターハイ)が7月28日から始まった。今回は東日本大震災の被災地である岩手県を含む北東北地区3県開催となり、参加する選手たちには躍動感あるプレイで復興への一助としてほしいところだが、受け入れ側にちらほらとトラブルが発生しているようだ。
まずは宿泊施設。同月24日からスタートした地上デジタル移行を受け、対応テレビか専用チューナーがないことにはテレビが見られない。被災地・岩手県は移行していないが、既に移行済みになっている青森、秋田の両県では「地デジ難民」となっている施設があるという。
「せっかく地元の魅力を広く知ってもらえる機会なのに、テレビも見られないような場所だと分かって2度と行きたいと思いますか? あり得ない」と憤慨するのは開催県の宿泊施設経営者。
各関係者に話を聞くと、インターハイ開催が決定したことで、廃業予定の施設も営業をさまざまな方面から依頼され、仕方なく続けている状態なのだとか。
「難民」である宿泊施設経営者は「もう潰すことを決めているのに、インターハイやるからテレビを買い換えろと言われてもね……」と憮然とする。確かに、1ヶ月間のために十数万円をドブに捨てるのは個人経営の施設にとっては酷な話。しかし、テレビが砂嵐では、失望する人間もいることだろう。
また、被災地ではボランティアや復興のため現場入りしている関係者から「泊まる場所がない」と悲鳴が上がっている。図らずも日帰りボランティアすることになった男性は「宿泊施設の確保はボランティアの原則ですが、どこも満員でただ被災地を見るだけになってしまいました……」と肩を落とす。
現地にいる土木関係者も「これ以上の増員は当面見込めない」という。開催地の自治体関係者は「震災発生で全てが狂ってしまった計画だったから、ある程度混乱するのは仕方がない。予算を大きくさく訳にもいかないし」とため息をもらす。
報じるメディアも四苦八苦している。「とにかく開催場所が点在しているため、フォローし切れない」と某地方紙の記者は嘆く。「セシウム汚染でどこの社でも人員はそちらのほうにさきたい。しかし、地元の子供たちが全国で活躍するお祭りを報じない訳にもいかないですし……」とは別の地方紙記者。全国紙記者は「まぁ、これまで通りに報じればいいので。福島県関係の記事は別でしょうが」と淡々としているのとは対照的だ。
宿泊施設が豊富な都市部と異なり、地方で開催するからには行政サイドがフォローしないことには立ち行かないと思われるが……。過去にインターハイを開催した地方の自治体関係者は内情を次のように話す。
「予算と人を取られるインターハイは、どこの自治体も敬遠するのは当然でしょう、1県だけでの負担は厳しいという理由で合同開催になったんですから。そこにあの震災ですからね、予算も人員もインターハイどころじゃない。開催した県には同情しますよ」