〈菅首相よ、ゲリラに戻れ〉(若宮啓文・主筆)、〈菅降ろしに違和感〉(松下秀雄・論説委員)――このように、朝日新聞の菅直人首相に対する「菅びいき」が目立っている。
そればかりか両者の原子力発電に対するスタンスもよく似ている。朝日は震災前は原発推進派だったにもかかわらず、菅氏が「脱原発宣言」をするや、紙面で「原発ゼロ社会」をぶち上げた。
興味深い証言がある。
「菅さんの『脱原発』は付け焼き刃の政策。焚きつけたのは辻元清美さんです。6月15日に孫正義氏やNPOが参加した『再生可能エネルギー促進法案成立!緊急集会』に熱心に誘った(辻元事務所は否定)。菅さんは大して興味はなかったが、実際に脱原発をいうと国民のウケが良かったので、一気にのめり込んだ」(民主党中間派議員)
脱原発を願う国民は多い。その政策に賛同が集まるのは当然だが、ひっかかるのは「運動」の正体である。
「脱原発を謳う団体、集会には、菅政権を裏で支援する新左翼などの人脈が根を張っている。実現性を無視して脱原発を煽る運動は要注意だ」(政府の情報担当スタッフ)
菅首相は東工大時代に学生運動で名を馳せた。後には、旧ソ連からの資金提供で活動していたとされる「ベトナムに平和を!市民連合(ベ平連)」に伸子夫人と共に参加していたといわれている(菅氏自身がそれについて語ったことはない)。麻生太郎・元首相が演説で、「菅直人はベ平連、仙谷由人は全共闘」と批判したこともある。
「菅さんは学生時代から既存の新左翼を嫌い、自分で新たなセクトを作ることに熱心だった。ベ平連も“新・新左翼”という意味では菅さん好みといえる。政治を志してからも、伸子夫人が各地の学園祭に『やきそば屋台』を出店して独自の活動資金と活動家を集めてきた。共産党や社会党のような政治組織化した左翼ではなく、ゲリラ的な団体を足場にしてきた政治家ではある」(学生時代からの知人)
ベ平連の創設者は、菅氏を「脱原発」に導いたという辻元氏が主宰した「ピースボート」の運営に関わった。そのグループには「赤軍派」の元大物もいた。
そこに朝日人脈との接点もあるという。
「菅総理の朝日人脈の最初は、TBSでキャスターも務めた筑紫哲也(故人)とされる。その筑紫氏はピースボートの支援者で、船上講師を務めたり、辻元氏に政界進出を促したりした。筑紫氏に限らず、朝日の幹部世代には、新左翼運動と深い関係を持つ者が多い。そこに総理が取り込まれてしまうことは危険だ」(前出・情報担当スタッフ)
※週刊ポスト2011年8月12日号