白澤卓二氏は、1958年生まれ。順天堂大学大学院医学研究科・加齢制御医学講座教授。アンチエイジングの第一人者として、著書やテレビ出演も多い白澤氏によると、カラオケ室を設置している国立大学の附属病院があるという。
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きのう食べたものや、きょうの日付を忘れる。親しい人の名前が出てこない……。日本の65歳以上の1割、推定200万人が認知症といわれ、若い層にも増えている。治療は薬によるものが主で、それ以外の医学的な治療法の確立が待ち望まれている。
ボケ封じ治療の最先端で注目されているのは、なんとカラオケ。曲を覚え、腹の底から思いきり声を出し、表情筋も体も動かし、笑い、涙ぐみ、拍手をもらって自己愛も満たされる……すべてが心身脳の活性化につながるのだ。
三重大学医学部の附属病院にはカラオケ室が設置され、臨床実験が行なわれている。同大学には2010年、国立大学初の認知症の専門講座「認知症医療学講座」が設置され、12月から「軽度の認知症患者15人に病院や自宅で歌ってもらい、前後の脳の働きの変化を調べる」研究をスタート。同大大学院医学系研究科の冨本秀和教授グループが、通信カラオケのエクシング社、ブラザー工業と共同で進めている。
まず機能的磁気共鳴断層撮影(fMRI)などの装置で15人の脳の活動を調べた上で、カラオケ室で週1回、『夕焼け小焼け』『ふるさと』などの童謡を練習してもらう。歌い方を教えるのは、独自の「音痴矯正法」を開発した同大教育学部の弓場徹教授。
さらに、自宅でもカラオケCDなどを使って週3回歌ってもらい、半年後に再び検査。カラオケをしなかった患者15人と、症状の進行を比較する。その調査結果は今年11月に明らかになる。
※週刊ポスト2011年8月12日号