全国の剛腕投手の球を直にうけ、ミットの感触を文に認める。ついた名が“流しのブルペンキャッチャー”。そんな安倍昌彦氏が、“金の卵”を探して地方大会に足を運ぶ日本ハムファイターズの岩井隆之スカウトに夏の甲子園の注目選手を聞いた。「 」内が岩井氏の発言だ。
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やっぱり甲子園で一番見たいのは、この投手でしょう。そういって岩井スカウトが名前を挙げたのが宮崎日大・武田翔太投手(187センチ・80キロ・右投右打)だ。
「地方に隠れていたドラフト1位候補の筆頭でしょう。九州大会にも出ていないんだから、まだほんとにベールに隠された状態。こんなスケールの大きな投手、今年だけじゃなくてなかなか出ませんよ」
スカウト、誰に訊いても同じような賛辞が続く全国有数の逸材。この武田投手の球を春先、「流しのブルペンキャッチャー」(雑誌『野球小僧』の名物コーナー)で受けていた。
1メートル90近くあって、こんなバランスで投げられるヤツがいるんだな…速い、重い、痛い。
ボールに確かな生命力があった。宮崎日大のブルペンでダルビッシュが投げていた。
「甲子園でどんな150キロ投げてくれるのか。全国のファンの人たちに、こんなの隠れていたんだ! って、ビックリさせてほしいですね」
出てくれんかなぁ…。思いのこもった一言には、スカウトという職務を超えて一人の野球人としての願いが窺えた。
※週刊ポスト2011年8月12日号