全国の剛腕投手の球を直にうけ、ミットの感触を文に認める。ついた名が“流しのブルペンキャッチャー”。そんな安倍昌彦氏が、“金の卵”を探して地方大会に足を運ぶニューヨーク・メッツの大慈彌功スカウトに夏の甲子園の注目選手を聞いた。「 」内が大慈彌氏の発言だ。
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ニューヨーク・メッツ、大慈彌功スカウト(環太平洋担当部長)の携帯電話に連絡をとったら、ちょうど移動の新幹線の中だった。
「今、盛岡で大谷を見た帰り道なんですよ」
岩手の花巻東高・大谷翔平投手(2年・191センチ・78キロ・右投左打)。快腕・菊池雄星が西武に進んで2年──。
「雄星以上の逸材はもう岩手から出ないだろうと思っていたら、すぐあとに現れた」
同校・佐々木洋監督が驚きながら、その成長を期待する右の本格派だ。
「この春に150キロ投げてるし、あの長い腕のしなやかなスイングはすばらしい。下半身が強くなってくれば、この先どこまで伸びるかわからない。まだ2年生だけどメジャーの素材としてもこんな楽しみな存在はなかなかいない」
この日の大谷投手、足の故障ということで登板回避。それが残念だったと、繰り返し悔やむ大慈彌スカウト。
昨年の秋の終わり、こんなことがあった。
バスで約20時間かけてやってきた関西遠征。途中の渋滞で、球場到着が試合開始30分前。車中泊であまり寝ていない状態なのに、サッとアップして、軽くキャッチボールして上がったマウンドで、最初の速球が低めに伸びる142キロ。
その裏の打席ではきれいに右中間を抜いて、バンビのような走りで三塁打に。額に光るきれいな汗に、「若いっていいなぁ」と思ったものだ。
※週刊ポスト2011年8月12日号