この国の経済と社会に立ちはだかる役所の「規制」の壁。SAPIO連載「おバカ規制の責任者出てこい!」でおなじみの元経産官僚で政策工房社長の原英史氏が、経営者として規制の壁に幾度もぶちあたってきたタリーズコーヒージャパン創業者の松田公太・参議院議員と“壁の越え方”を話し合った。
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原:私は本誌で、国民の生活や経営者の工夫の邪魔をする「おバカ規制」を追及する連載を続けています。松田さんが経営者時代に感じた規制の壁はありますか?
松田:タリーズコーヒーを始める前に、アメリカで人気のアイスクリームを輸入しようと考えていたことがあるんです。しかし、「ソルビン酸」という保存料が使われている製品は輸入できないと言われた。アメリカでは普通に食べられているのに、なぜだろうかと調べると、実は国内でも、かまぼこや醤油などの食品には使われている。日本人の摂取量は相当あるはずなのに、アイスクリームはどうして輸入できないのか、非常に不思議に思いました。
原:厚生労働省の添加物規制ですね。
松田:役所に掛け合ってみたんですが、無理でした。アイスクリーム業界の方に聞いても、「役所がダメというものは無理だからあきらめたほうがいい」と。ソルビン酸の規制は昭和40年代にできて、一度も見直されていないということもわかって、健康にどの程度影響があるのかが曖昧なまま規制が続いているんじゃないかと強く感じましたね。
松田:こういうこともありました。席のないテイクアウト型のコーヒー店は、日本で私が最初に始めたのですが、ある会社の本社の1階ロビーに店舗を出すことになり、消防と保健所の許可を取った。店舗ができ上がりかけた時に、初めてのスタイルだから念のために内装を見てもらったら、消防は「店舗に屋根をつけてはいけない」と言う。火事が起きた時、スプリンクラーが発動しても屋根があると水がかからないから。次に保健所に見てもらうと「屋根が必要」という。上から落下物が落ちてくるかもしれないから衛生上必要だと。
原:互いに譲らないのですね。
松田:ええ。他の役所のことは関係ないと。困って、最終的にメッシュタイプの屋根にした。水は浸透するし、落下物も防ぐことはできる。なんとかクリアしました。
原:典型的な縦割り行政の問題です。役所はそれぞれ、他省庁の規制なんて知らないし、どうしようもない。だから松田さんが矛盾を解決するアイディアを出して、担当者はホッとしたんじゃないですか。
※SAPIO2011年8月17日・24日号