内閣府による最新の国民調査で、「日頃の生活の悩みや不安」の1位は、「健康」でも「人間関係」でもなく、「老後の生活設計」となっている。テレビや雑誌では、「ゆとりある老後のためには5000万円必要」といわれているが、「そんな貯蓄は無理」と頭を抱えている人も多いだろう。
そこで、今年2~7月に開かれた菅直人首相直轄の「社会保障改革に関する集中検討会議」では委員も務め、『経済のニュースがよくわかる本』(小学館)など著書の累計は700万部を越える、細野真宏さんに、老後の生活費について教えてもらった。
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年をとると病気にかかりやすくなり、介護が必要となることもあります。そんなことから「老後はお金がかかる」と思い込んでいる人が多いのではないでしょうか。でも、実は老後の暮らしはそれほど出費がかさむものではありません。
高齢の夫婦(夫65才以上、妻60才以上)における1か月の平均生活費をまとめたのが下の表です(総務省「家計調査」2010年より)。合計で月23万円。これだけあれば、夫婦ふたりで「少なくとも平均的な暮らしを送ることができる」ということはいえるのです。
また、この数字は、すべての生活費の平均なので、医療や介護にかかるお金もすべて含まれた金額です。
ちなみに、月23万円は年間にすると276万円。85才まで生きるとすると、25年間で総額6900万円、90才まで生きるなら30年間で総額8280万円となります。「老後の収入」として年金や退職金があることを考えれば「定年退職するまでに貯蓄だけで1億円必要」といった説は「誤解」であることがわかります。
■夫65才以上、妻60才以上のふたり暮らしにかかる1か月の生活費の平均は?
食料:5万7876円
住居:1万4921円
光熱・水道:1万9220円
家具・家事用品:9187円
被服および履き物:6581円
保健医療:1万4959円
交通・通信:2万4652円
教育:2円
教養娯楽:2万9315円
その他の消費支出:5万7842円
諸雑費など:1万9999円
こづかい:6786円
交際費:3万1057円
消費支出合計:23万4555円
出典/総務省「家計調査」2010年
※女性セブン2011年8月18日号