「パリパリ(早く早く)経営」で快進撃が続く韓国のサムスン。経済ジャーナリストの片山修氏がサムスン成功の秘訣を2つ分析する。
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一つ目に、サムスンの「パリパリ経営」を支えるのが、創業者の三男で、二代目会長の李健煕氏のトップダウンによる、スピーディな意思決定システムだ。
サムスンは、世襲のオーナー企業である。創業家と、それをサポートする“秘書室”に、グループ企業の重要な情報を集め、迅速かつ的確な判断を下している。
オーナー経営者は、サラリーマン社長にはないリスクテイクや、求心力を発揮できる。特に、厳しい経営環境下では、チャンスを見極め、大胆な決断を下せるオーナー経営者であれば、その利点は際立つ。
サムスングループの人材戦略に長年携わり、サムスン経済研究所副社長を務めた張相秀氏は、李健煕氏について、次のように言う。
「求心力がないと、企業はまわっていきませんからね。サムスンは創業家を中心として一体感を保っています。それがないと、組織がバラバラになってしまいます」
二つ目に、サムスンは、収益重視の新商品開発システムを確立した。
例えばインド市場の場合、今後、中間所得層が急拡大するのは間違いない。サムスンは、その中間所得層、いわばボリュームゾーンを狙い撃ちにした。この時、威力を発揮したのが、モノづくりを根本的に見直した収益重視の新商品開発システムだ。
サムスンは、「リバース・エンジニアリング型開発」を導入した。日本メーカーなどライバルメーカーの先行製品を分解して調査・分析し、構造から機能を逆探知したうえで、機能を足したり引いたりして最終的にオリジナル製品をつくる。それも、当該の商品価格よりも安く設定するというスタイルだ。
ただの“真似”ではない。現地ニーズを徹底的に調査する。そして新興国市場に必要な機能は残し、不要な機能を削り落とす。必要があれば、新興国市場に求められる機能を追加し、リ・デザインする。また、素材の品質においても、先進国と同じレベルである必要はない。現地市場に合わせて適正化する。オーバースペック(過剰性能)を捨てる判断は日本企業と比べて格段に優れている。
これらにより開発コストや時間を大幅に削減し、新興国市場に受け入れられる価格で、しかもスピーディに、新商品を市場に投入できる。そしてサムスンは、狙いを定めるや、躊躇なく、一気に、大胆に、しかも的確な商品を市場に送り込むのだ。
※SAPIO2011年8月17日・24日号