全国の剛腕投手の球を直にうけ、ミットの感触を文に認める。ついた名が“流しのブルペンキャッチャー”。そんな安倍昌彦氏が、“金の卵”を探して地方大会に足を運ぶヤクルト・スワローズの小田義人スカウトに夏の甲子園の注目選手を聞いた。「 」内が小田氏の発言だ。
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山梨の東海大甲府・高橋周平遊撃手(180センチ・83キロ・右投左打)。高校通算70本塁打以上の強打は、高校生のレベルをはるかに超え、今年のアマチュア・ナンバーワンスラッガーとして、異論を唱えるもの誰もなしの「超」のつく逸材だ。
ウェーティング・サークルでバット振っているだけでも、一軍でもう4、5年やってるような雰囲気には、風格すら感じる。タイプは阪神・金本知憲か。バットを最短距離で振り抜き、弾丸ライナーでスタンドまで持っていく。
「飛び抜けた存在だと思いますよ。今年どころか、ここ10年でも高校ナンバーワンの打者かもしれません」
静岡高、早稲田大、大昭和製紙と、アマチュア野球の名門を渡り歩いてきたヤクルト・小田義人スカウト。プロ11年間の現役生活。ヤクルト、日本ハムではクリーンアップも務めた強打者だ。
「ボクが見てきたヤクルトの選手でいえば、頑張れば岩村(明憲、現楽天)のレベルには十分いくと思う。メチャ振りしないのに、ライトが1歩も動けないようなホームランを打つんだよね」
柔らかく打てる打者はインパクトが弱い。逆に、強く叩ける打者は堅さがあって、打てる範囲が狭い。なかなか両立しない柔軟性とパワーを兼ね備えているという。
「自分は野球で食っていくんだって覚悟があり、ケガをして監督が休めっていっても絶対休まない。応援したくなる選手。最後の夏に弾丸ライナーの一発打たせてあげたいね」
※週刊ポスト2011年8月12日号