中国浙江省温州市で7月下旬に起きた“中国版新幹線”の脱線・落下事故は、鉄道網の急速な拡大を進めてきた共産党政権にダメージとなるだけではなく、中国の「経済破綻」への序章ともなりそうだ。指摘するのは、天安門事件をスクープ報道した、国際教養大学教授のウィリー・ラム氏である。
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香港の中国経済専門家の試算によると、中国全体の公的債務は2011年の国内総生産(GDP)の70%にも達している。その額は28兆元(約342 兆円)で、今後数年間で10%以上も増加する見通しだ。
そのほぼ半分が地方政府による債務である。中国国家審計署(会計検査院に相当)は6 月下旬、2010年末現在の地方政府の債務残高が10兆7174 億9100万元(約131 兆円)であることを初めて公表した。
しかし、格付け大手ムーディーズは7 月初め、この額は過小に見積もられた金額で、本当は14兆2000 億元(約174 兆円)に達し、このうち、最大で6 兆元(約73兆4000億円)はほぼ回収不能であるとしている。
この多額の債務の大半は不動産投資に絡むもので、地方政府は直接、市場から資金を調達できないため、ダミーの投資会社を設立して、銀行などから借りた資金を元手にインフラや不動産開発を進めてきた。
しかし、不動産価格が落ち込み始めたことから、大幅な損失が出ている。同署によると、中国全土の78の市政府が歳入以上の債務を抱え、すでに破綻状態にある市も多いという。
香港の国際金融筋は「多額の焦げ付きが出ると、中国政府の格付けにも影響する。地方政府の債務はいずれ中央政府が肩代わりせざるを得なくなる」と指摘する。
(翻訳・構成/相馬勝)
※SAPIO2011年8月17日・24日号