菅直人首相は、再生可能エネルギー、ストレステスト、脱原発依存など、新しいアジェンダを次々と出している。大前研一氏は、菅首相の手法について、「混乱を拡大する“五月雨戦術”により自らの延命を図っている」と指摘。そして、管首相のアジェンダについてこう指摘する。
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菅首相が出しているアジェンダは、私が震災直後の3月19日にネット上に公開した提案と全く同じで、その内容は菅首相にも直接説明した経緯があるのだが、ここで最も大きな誤りは、彼が事の順序を間違えている点にある。だから脈絡なく、新しい話が次々に飛び出してきて辻褄が合わなくなり、結果として原発再稼働とエネルギー政策を巡る政府の対応がますます迷走する悲劇を招いているのだ。
たとえば、ストレステストに関しては、もっと早く打ち出すか、佐賀県の九州電力・玄海原発の再稼働後に打ち出すべきだった。振り返れば、海江田万里経済産業相は原子力安全・保安院の「安全宣言」と菅首相の再稼働容認発言を受けて6月29日に佐賀県を訪れ、「緊急対策をとり、安全の確保はできている。再開については国が責任を持ちます」と述べた。
ところが、その1週間後に菅首相は突然、全原発のストレステスト実施を発表した。政権内で事前に根回しした形跡はない。これでは地元自治体が保安院の「安全宣言」や再稼働に不信感を持つのは当然だろう。
※週刊ポスト2011年8月19・26日号