不確実な退職金であっても、サラリーマンにとってはやはり虎の子だ。もはや公的年金には頼れない時代だからである。2011年3月に行われたフィデリティ退職・投資教育研究所の「サラリーマン1万人アンケート」によれば、84.6%が「公的年金だけでは生活資金は賄えない」と答えている。破綻寸前の年金財政を考えれば正しい認識といえるだろう。
「退職後は社会的な活動が少なくなるから、生活費も下がる」と思っている人は多いだろうが、これは危険な認識である。現実には退職前後で生活費はそれほど変わらない。60~64歳のリタイア世代に「退職後に生活費が下がると思っていたかどうか」を聞いたアンケートでは、69.3%が「下がると思った」と答えたが、実際は39.3%の人が退職前の生活費と変わらなかった。
その大きな理由が退職後の医療費の激増だ。年間医療費は65歳以上になると一気に跳ね上がり、45~64歳の世代の2.7倍、75歳以上では3.3倍に膨れ上がる。介護費も深刻だ。75歳以上の要介護認定率は29.8%で、45~64歳の約6倍。医療・介護費を考えれば、生活費は退職前より減るとはいえない。
だからこそ退職金はサラリーマンにとって老後の生活を支える「人生最後の砦」なのである。
※週刊ポスト2011年8月19・26日号