10万人が動員された東日本大震災の災害派遣は、自衛隊にとって紛れもなく「史上最大の作戦」であった。
だが、現場で作業にあたった自衛官たちは「政治のパフォーマンス」に振り回され、それが復旧・復興の障害となった一面もあったようだ。現地で活動した陸自2佐、陸自1尉、海自2佐、海自3佐の4人が、何が起きていたのかを本音で語り合った。
* * *
陸自1尉:隊員が命がけで実施した福島原発3号機への海水投下作戦ですが、総理の指示なのに、正式な大臣命令は出されず、統合幕僚長の判断ということにされた。まぁ、正直あの総理に“命を賭けろ”と命じられても隊員のほうが戸惑いますが……。
それだけではありません。当日(3月17日午前)の作戦実施直前、実は現地では高圧放水車による放水準備が進行していた。ヘリによる空中投下と地上からの放水、どちらが効果的か考えるまでもない、放水車です。それなのに、総理肝いりの空中投下をやらせるために、より効果的な地上放水を後回しにした。いわば、政治のパフォーマンスのために自衛隊員の生命を危険にさらし、なおかつ、効果的な冷却が二の次にされたのではないでしょうか。
陸自2佐:政府は原発対応にあたった隊員に1日約4万円の手当をつけることにしたが、カネの問題ではない。
海自2佐:総理が宮城の被災地を視察した際、大型船が陸地に乗り上げている前でインタビューを受ける予定だった。すると、2か月以上も後回しにされていた船の周囲の瓦礫を撤去するように指示が出た。被災者のためではなく、総理の会見場づくりが優先だったんじゃないか。
※SAPIO2011年8月17日・24日号