国際情報

伊藤穰一MIT所長 年功序列は若者に行動力発揮する機会与えぬ

 世界最先端の情報技術・文化研究で知られる米マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボ。同研究所のトップに初めて日本人が抜擢されて世界的な話題になっている。伊藤穰一氏(45)数多くのITベンチャー企業に投資し、米ビジネスウィーク誌でも「アジアの星50人」「ネット上で最も影響力のある世界の25人」などに選ばれている人物だ。世界を飛び回って活躍する彼の目に、今の日本はどう映っているのか。

 * * *
――伊藤さんは国際的な視点や人脈の広さもよく知られています。そうした国際的視野から、日本、特に企業の現状をどう見ますか?

伊藤:日本は高齢化と年功序列などが続き、若者に行動力を発揮する機会を与えていない。これでは優秀な若者は海外に出て行ってしまいます。帰ってくればいいが帰ってこないことが心配ですね。

「モノ作り」というのは美しい言葉ですが、若者の数が減っている中で中国と競争するなら、工場生産ではなく、ITなど少人数でも勝てるもので国際競争力をつけるべきです。

――それには何が必要ですか?

伊藤:今、求められているのは、「創造力」と「一人一人が違うこと」。会社単位ではなく、個人単位で国際競争に勝つことが要請される時代にあっては、一人一人が違うことをやって勝つしかありません。戦後の高度成長期は「集団」の力があればよかったが、今は違うのです。日本人はどうしても団体行動に慣れてしまっていて、「組織」が強いため、大企業も政府もみんな同じ方向性でしか動けない。変化する力がなくなっているわけです。構造的になかなか難しい。上の方だけ入れ替えても変わらない。

――そのための人材育成が大切だと。

伊藤:教育改革が叫ばれていますが、「教育」というより「学び」が重要だと思います。
「学び方」が変わった。これまでは先生から教えてもらったものを覚えるのが「教育」でしたが、大人になっても学び続けられるような方法を教えるべきです。

 今は知恵と行動力、そして他とは違う工夫が必要な時代です。一人一人が「学び」、成長して強くならなくてはいけない。政府もそうですが、「強い日本人」の育成が急務です。
 でも悲観はしていません。日本はピンチの時ほど強くなる国だと思います。東日本大震災もその一つのきっかけになるだろうと信じています。

●聞き手/武末幸繁(ジャーナリスト)

関連キーワード

関連記事

トピックス

希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
NASAが発表したアルテミス計画の宇宙服のデザイン(写真=AP/AFLO)
《日本人が月に降り立つ日は間近》月面探査最前線、JAXA「SLIM」とNASA「アルテミス計画」で日本の存在感が増大 インドとの共同計画や一般企業の取り組みも
週刊ポスト
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト