7月18日、ついに金価格はニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物相場で1トロイ・オンス(約31.1035グラム)=1607.70ドルまで上昇し、史上初めて1600ドルの大台を突破し、その後も1600ドル台で推移している。
今後の金の動向をマーケット ストラテジィ インスティチュート代表取締役の亀井幸一郎氏が解説する。
* * *
米ドルを刷ってばら撒く「QE2(量的金融緩和第2弾)」が6月末に終了した。信用リスクがない実物資産である金の価格上昇にとって都合のいい環境も1つの区切りを迎えたが、金価格は依然として高値圏で推移している。
金価格が歴史的な上昇を遂げてきた理由には大きく分けて、【1】アメリカの金融政策 【2】ヨーロッパでの財政危機、それから波及する金融危機的な動き 【3】中国、インドなど新興国を中心とした金需要の再加速 【4】北アフリカ・中東情勢 【5】日本の大震災と原発危機、が挙げられる。
今年下半期の金価格は、この5点を踏まえた上で考える必要があるだろう。
さらに、2008年のリーマン・ショック以降、市場参加者の種類も数も増え、金市場が厚みを増していることも忘れてはいけない。
たとえば、以前は金を売っていた各国の中央銀行が売らなくなったばかりか、新興国の中央銀行を中心に金購入に走っている。公的部門が昨年1年間で買い越した金は73トンに上り、1988年以来22年ぶりに買いに転じたばかりだが、今年は1~5月までの間にすでに156トンもの金を買っている。このうち、最も多く購入したのはメキシコ中央銀行で99トン。また、ロシアの中央銀行は純金積み立てのように毎月、金を買っており、その量は1~5月期で計42.4トン(昨年同期は54.2トン)に上る。
中国、インドでは個人投資家の購入も旺盛だ。特に中国では、政府が国内での金流通量を増やす政策を導入しており、2009年秋から4大商業銀行などに対し、金地金の取扱販売量を拡大するよう大号令をかけている。販売現場の整備が一気に進み、中国の投資家が大挙して押しかける状況になっているのだ。
時を同じくして、インドでは投資家の相場観、投資パターンが変化し、以前は価格が下がらなければ買わなかったのに、高止まりしていても買いに入るという現象が起きている。それだけ先高期待が高まっているということであり、彼らが金を買う動きは今後も続くだろう。
※マネーポスト2011年9月号