フィデリティ退職・投資教育研究所のアンケート調査によれば、退職直後の60~65歳のサラリーマンの6割以上は投資をしていない。約半数がその理由を「元本割れのリスクを取りたくないから」と答えている。
退職後の定期的な収入は年金だけで、あとは現役時代の貯金と退職金を切り崩しながら生きていく、と考えれば、その命綱を投資で目減りさせてしまったら取り返しがつかない、という思いもわからないではない。
だが、退職時に貯蓄1000万円と退職金2000万円を合わせた3000万円を持っていたと仮定し、退職後は年金以外の生活費として毎月10万円ずつ使っていくとする。3000万円を全く投資に回さなければ85歳で資金は底を尽くが、75歳まで年利3%で運用すれば95歳までもたせられる。利息がゼロに等しい銀行預金に“塩漬け”することこそリスクだと知るべきだ。
投資に目を向ける理由は他にもある。フィデリティ退職・投資教育研究所所長・野尻哲史氏の指摘。
「現在は日本がデフレの真っ最中なので危機感は薄いが、長いリタイア生活を考えればインフレリスクも頭に入れておかなければなりません。預貯金は、インフレ時には価値が下がってしまう。
すぐにインフレが起きるかどうかはわかりませんが、セカンドライフが30年近く残されていると考えれば、考え得るリスクに備えておきたいところです。だからインフレに負けない収益率を確保するために株式などを運用先として考えるべきなのです」
※週刊ポスト2011年8月19・26日号