米国債の格下げに、中国が過剰に反応している。なぜ中国は、「アメリカがくしゃみをするとたちまちヒステリックに反応する」という神経質さを露呈するのか。ジャーナリストの富坂聰氏が解説する。
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史上初となる米国債の格下げにより世界のマーケットに動揺が広がるなか、中国の温家宝首相は、アメリカ政府に対し(名指しは避けたが)財政削減を要求して話題となった。
とくに欧米メディアは「最大の債権国としての立場から(中国が)要求」と大きく報じた。これに先立つ債務引き上げ問題をめぐる議会の紛糾では、国営メディアが「無責任な政治ショー」と断じるなど中国のアメリカに対する厳しい態度が目立っていた。
GDPの伸びは力強い中国経済だが、その実態は「体内にさまざまな不安の芽を抱えた虚弱体質」で、アメリカがくしゃみをするとたちまちヒステリックに反応するという神経質な反応を続けてきたのだ。
欧米発の金融危機の兆候にいちいち苛立つ中国だが、香港メディアに至っては、米国債格下げを「アメリカが中国経済を陥れるための陰謀」とさえ報じたほどだ。
だが、中国がこれほど米国債の格下げに反応するのも不思議なことだ。というのもS&P(スタンダード・アンド・プアーズ)に先駆けて格下げしたのは、他ならぬ中国だからである。8月3日、中国の格付け会社『大公国際資信評価有限公司』が米国債を「A+」から「A」へと一段階引き下げたのではなかったのか。
温家宝の要求は、さらに噛み砕けば「借金をして身の丈以上の消費する米国経済への改善要求」(これは中国のシンクタンク研究者らがあらゆる場面で繰り返し主張している内容)なのだが、これとて中国が批判すべき問題ではない。
アメリカ人が実力以上の借金をして消費したことで最も利益を得ていたのは最大の対米輸出国である中国自身だからだ。さらに中国は、貿易で積み上げた黒字を、米国債の取得という形でアメリカに還流してバブル経済の醸成に一役買っていたのだ。
つまり中国は、被害者ではなく、アメリカの共犯者(日本も同じだが)なのだ。