空前のK-POP旋風が巻き起こる日本の音楽シーン。K-POPスターに憧れて、韓国でレッスンを受ける日本人の若者もいるのだという。
ソウル市松坡区の中心部・蚕室から車で数分、3階建てビルの地下1階にある「NYダンススクール」。未来のK-POPスターを夢見る若者が集うスクールだ。
教室の正面に張られた鏡に向かい、ストリートファッションに身を包んだ若者たちが思い思いのステップを踏む。レッスンを受ける韓国人の中に、日本から留学をしている中村美那子さん(18)の姿があった。
K-POPが日本で大旋風を起こすなか、韓流アイドルに憧れる若者が増えている。単に見るだけでなく、具体的な夢にもなっている。昔はダンス留学といえば、アメリカが主流。それがいまは韓国を舞台に選ぶ人も多い。中村さんもそのひとりだ。
「もともとダンスが好きで、日本では小学生のころから芸能事務所にはいっていたんです。表現の幅を広げるために留学を考えてましたが、少女時代やKARAを見ていると、ダンスの質や精度が圧倒的に違って、それで韓国にしようと。母も韓流好きで後押ししてくれました」(中村さん)
中村さんはK-POPスターとしてデビューするのを夢見て、2011年7月から韓国に留学。ひとり暮らしをしながら、NYダンススクールに通い始めた。
生徒数は男女半々で約500名。プロを目指すオーディションクラスの授業料は月8回で40万ウォン(約2万8000円)。韓国3大芸能プロダクションのひとつであるJYPエンターテインメントと提携し、2PM、BEAST、ワンダーガールズらを育てた優秀な講師が実際の指導にあたっていることも魅力だった。その中村さんが韓国でのレッスン初日を振り返った。
「いきなり『自由に踊ってごらん』といわれて体が固まってしまったんです。日本ではまず先生の手本を見て、先生のいう通りに細かく何週間もかけて同じ1曲のフリを完成させるけど、こっちは曲を聴いてその場で体を動かすフリーダンスがメイン。自分で考えて自分のスタイルを見つけないと踊れないんです」
中村さんを指導する講師のリー・ソンホンさんがいう。
「素質というのは、上手い下手じゃなくて、自分がどれだけ面白いと感じて踊れるか、ということに尽きます。その感情が途中で切れてしまう子は素質もそこで終わりです」
同じ年頃の韓国人のハングリー精神にも見習う点があったという。
「競争意識が高くて、レッスンが終わってからもみんな寝る間を惜しんで練習をしているんです。私もこちらでは夕方まで韓国語の勉強などをして、16時から21時までレッスンや自主練。その後も公園などで練習して家に帰るのは24時ぐらいです」(中村さん)
中村さんの当面の目標は、JYPエンターテインメントが開くオーディションに合格すること。晴れて練習生に選ばれれば、さらなるレッスンづけの毎日が待っている。
※女性セブン2011年8月25日・9月1日号