選挙が近づくと、通勤時間に駅前で候補者が演説する姿をよく見かけるだろう。これは「朝立ち」と呼ばれるが、話題の新刊『「規制」を変えれば電気も足りる』(小学館101新書)を上梓した元経産省キャリア官僚の原英史氏(現・政策工房社長)が、その裏側を解説する。
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そもそも公職選挙法では「選挙運動」は、ごく限られた期間しか許されていない。告示(総選挙・参院通常選挙の場合は公示)から投開票日前日までの間だけだ(129条)。例えば、地方議会なら5~9日間、衆議院なら12日間だ。その期間より前に選挙運動をやると違法行為の「事前運動」として、1年以下の禁錮または罰金の対象になる。
それなのに、実際は多くの候補者が告示よりもずっと前から「朝立ち」を始める。議員によっては毎日やる人もいるほどだ。あの人たちは「選挙違反」をやっていたのか……というと、そうではない。
よく見ていると、告示前の朝立ちと告示後の活動は微妙に違うことがわかる。告示前に演説をする場合は、あくまで「選挙運動としてやっているわけではない」という前提。このために、こんな“隠れたルール”を守っているはずだ。
■「ご支援よろしく」などのフレーズは口にしない。
■名前の入ったタスキはしない(「候補者の氏名を表示する文書図画」として違法になってしまうから。ただし、「本人」と印字されたタスキならOK)。
■選挙事務所や選挙カーの、候補者の「氏名」が入った看板には覆いをかける(しかも、透けて見えるのはOKだからあえて透けるような「とても薄い布」をかける)。
こうした“ルール”を守れば、選挙違反に問われないという“抜け道”が用意されているのである。