電力は貯められない以上、昼間のピーク時以外の節電は無駄である。行き過ぎた節電はさまざまな弊害をもたらすと獨協大学教授の森永卓郎氏は警鐘を鳴らす。さらに、森永氏は菅総理が「弱者を守るという意識はゼロ」と痛烈に批判する。
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節電の強要は消費マインドも冷え込ませ、たとえば、電力を消費する遊園地には行ってはいけないような気分も生まれている。私のゼミには、某遊園地でバイトしている学生がいるが、客が激減して自宅待機になり、収入が途絶えて困っていた。今は大幅な割引サービスで客足は戻ったようだが、売り上げは減っているはずだ。都内の他の遊園地でも開園時間を短縮したり、一部の飲食店や遊戯施設を休止したりしている。節電が理由だが、実際には客も減っているのだ。バイトで働いている人々は収入が減り、この状態が続けば解雇もありうるだろう。
今、日本企業は「円高」「増税」「電力不足」の三重苦を背負わされ、海外への移転を本気で考え始めている。そうなれば町に失業者が溢れることになる。この内、電力不足は原発を稼働すれば解決できる問題で、私は「原発を再稼働せよ」と主張してきた。それに対して「人命軽視」などと誹謗中傷する人がいるが、お年寄りや子供が熱中症で倒れていくのを放置するのは人命軽視ではないのか。失業率と自殺率には明確な相関があり、景気が悪くなると自殺者も増加するのである。
菅首相は再生可能エネルギー買い取り法案の成立に異常な執念を見せているが、太陽光発電を設置できるのは一戸建ての持ち家に住む裕福な人だけで、お金持ちは発電で儲け、貧しい人々は買い取りで高騰した電気代を負担させられるだけになる。消費税増税と同様、貧富格差を拡大する政策である。
菅首相は市民運動出身だが、もはや弱者を守るという意識はゼロだ。「海江田経産相と私は意思統一されている」と玄海の再稼働の要請に送り出したにもかかわらず、その直後に「ストレステストをやる」と梯子をはずしてぶち壊しにした。これは“内ゲバ”に等しい。この弱者無視の姿勢と内ゲバを見れば、市民運動家どころか、イデオロギーに狂った“連合赤軍”だ。彼を辞めさせなければ民主党に明日はない。
※SAPIO2011年8月17日・24日号