今回、本誌SAPIOでは東日本大震災で活躍した自衛隊員や、その関係者たち120人に総力取材を行なった。ここでは陸上自衛官を夫に持つある妻の話を紹介する。
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“あの日”の朝はいつものように、出勤する夫を見送ったという。午後、大地震が発生し、すぐに“ああ、主人は被災地に行くだろうな”と直感した。以前、家族旅行中に大地震があり、急遽、部隊に戻ったことがあったからだ。
「気をつけて」と携帯メールしたが返信はなく、音信不通のまま、1週間ほどが過ぎた。
「何かあれば、逆に連絡があるだろうと思って、あまり心配しないようにしました。官舎にいる友達から『旦那さんの部隊が岩手で活動しているとテレビで放映していた』と教えてもらいました。1週間ほどで主人から電話があり、メールもたまに来るようになりました。心配になったのは主人が『迷彩服が洗濯できない。2着しかないので替えがない』と言っていたことです」
震災から1か月ほどして、家族向けの説明会が開かれ、活動内容や手当なども教えてもらった。しかし、それ以前に報道を通じて夫の活動を理解することが多かったという。
「今回は自衛隊を取り上げた報道が多くて、高校時代の友人が『ご主人、大変ね』と、いろいろ情報を教えてくれました。国民の皆さんが自衛隊に関心を持ってくれたことが嬉しかった」
小学生の子供も「お父さん映るかな」とテレビにかじりついていたそうだ。
※SAPIO2011年8月17日・24日号