定期的な収入が年金に限られるリタイア世代のマネー運用は、現役世代のそれとは大きく違う。基本は長期的な視点での分散投資を心掛けることだが、単に多くの投資先に振り分ければいいというわけではない。
個人向けに投資コンサルティングを行なう「アッシュインベストメントテクノロジー」代表の萩原淳氏がいう。
「数年前、退職金の運用先として『世界各国の債券に投資するから安全』と謳う外国債券ファンドが人気になりました。しかし、欧州の信用不安で債券価格は暴落。それで、資産が半分に減ってしまったという方からの相談が増えています。
分散投資と聞くと、海外資産に振り分ければいいと考えてしまう人は多い。しかし、海外への投資は情報が少ないリスクがある。退職後の資産運用では、自分で理解し、納得できる商品に投資することが肝心です」
そこで目を向けたいのが身近で情報を入手しやすい日本株だ。では、どんな銘柄が向いているのか。萩原氏がアドバイスする。
「退職金の投資先として向くのは、長期的な視点で発展が見込めそうな分野で、現在の株価が割安な銘柄です。具体的な分野を挙げるとすれば、【1】スマートグリッド(次世代送電網)やクラウド・コンピューティングといった次世代技術関連、【2】太陽光発電など次世代エネルギー関連、【3】半導体・エレクトロニクス産業関連などです。その分野で『PBR(株価純資産倍率)』が1倍割れの銘柄を選べばいいでしょう」
萩原氏が注目する3銘柄
●NEC(東証・6701)
効率的な送電を可能にするスマートグリッドや防災時の危機管理から注目を集めるクラウド・コンピューティングなど数多くの技術を持つ。
●シャープ(東証・6753)
液晶技術に強みを持つほか、次世代エネルギーとして注目の高まる太陽光発電システムにも定評がある。
●ルネサスエレクトロニクス(東証・6723 )
旧NECエレクトロニクスと旧ルネサステクノロジの統合で2010年に設立された「日の丸半導体連合」。同社の半導体はあらゆる製品の核。
※週刊ポスト2011年8月19・26日号