国際情報

NY「野球の聖地」訪問の駐在妻 現地の商魂の逞しさに愕然

おぐにあやこ氏は1966年大阪生まれ。元毎日新聞記者。夫の転勤を機に退社し、2007年夏より夫、小学生の息子と共にワシントンDC郊外に在住。著者に『ベイビーパッカーでいこう!』や週刊ポスト連載をまとめた『アメリカなう。』などがある。おぐに氏が、「アメリカの少年野球事情」について解説する。

* * *
「野球殿堂」で有名なニューヨーク州クーパーズタウンに、念願かなって行ってきた。息子の野球チームが、この村で行なわれたトーナメント大会に出場したからだ。

クーパーズタウンは、野球ファンにとってはまさに「聖地」だ。「野球発祥の地」という神話(実は作り話らしい)で知られているほか、「野球殿堂」には数々のメジャーリーガーの記録はもちろん、イチロー選手や松井秀喜選手らのユニフォームやバットなんかも飾られている。

もっとも、「聖地」という言葉の響きに、何か神聖で厳かな雰囲気を期待してた私は、実際に村に着いてみて、あれれれれ? 野球殿堂の周辺には、記念バットやサイン入り野球カードなど、観光客を当て込んだ土産物屋がずらり。村の民宿の名前もレストランのメニューも、野球に絡めたものばかり。恐るべし、野球ビジネス。これじゃ「聖地」というより、「野球のテーマパーク」だよ。

息子たちの参加した大会の施設にも驚いた。少年用の野球場がなんと22面! そこに1400人宿泊できる寮や、打撃練習場が並ぶ。毎夏、1週間のトーナメント大会が13回行なわれ、全米やカナダから毎週104チーム、合計1350チームがやってくるんだって。

商売上手なのは、12歳チームに対象を絞っていること。アメリカの野球少年にとって「12歳の夏」は特別な意味を持つ。小さなリトルリーグ用球場(塁間60フィート)でプレーできる最後の季節だからだ。お陰でここのトーナメント大会は、今や知名度でも規模でも全米ナンバーワン。「一生に一度しかない“最後の夏”は、野球の聖地クーパーズタウンに行こう」ってのが、今どきのアメリカの野球少年の夢であり、野球オヤジのロマンなのだ。

それにしても、野球の「聖地」がこんな風に、少年野球ビジネスに熱くなっているとは! ひと夏に約1万6000人の選手を集めるというから、選手の参加費収入だけで、なんと10億円!? 家族の宿泊・飲食費まで考えたら、「聖地」への経済効果は、いったい幾らになるのやら。さすがは、スポーツビジネスの先進国アメリカ。でも、野球少年の純粋な夢を商売のタネに、ここまで儲けちゃっていいのかなぁ~。

※週刊ポスト2011年8月19・26日号
(「ニッポン あ・ちゃ・ちゃ」第156回より抜粋)

関連記事

トピックス

中居正広氏と報告書に記載のあったホテルの「間取り」
中居正広氏と「タレントU」が女性アナらと4人で過ごした“38万円スイートルーム”は「男女2人きりになりやすいチョイス」
NEWSポストセブン
『月曜から夜ふかし』不適切編集の余波も(マツコ・デラックス/時事通信フォト)
『月曜から夜ふかし』不適切編集の余波、バカリズム脚本ドラマ『ホットスポット』配信&DVDへの影響はあるのか 日本テレビは「様々なご意見を頂戴しています」と回答
週刊ポスト
大谷翔平が新型バットを握る日はあるのか(Getty Images)
「MLBを破壊する」新型“魚雷バット”で最も恩恵を受けるのは中距離バッター 大谷翔平は“超長尺バット”で独自路線を貫くかどうかの分かれ道
週刊ポスト
もし石破政権が「衆参W(ダブル)選挙」に打って出たら…(時事通信フォト)
永田町で囁かれる7月の「衆参ダブル選挙」 参院選詳細シミュレーションでは自公惨敗で参院過半数割れの可能性、国民民主大躍進で与野党逆転へ
週刊ポスト
約6年ぶりに開催された宮中晩餐会に参加された愛子さま(時事通信)
《ティアラ着用せず》愛子さま、初めての宮中晩餐会を海外一部メディアが「物足りない初舞台」と指摘した理由
NEWSポストセブン
「フォートナイト」世界大会出場を目指すYouTuber・Tarou(本人Xより)
小学生ゲーム実況YouTuberの「中学校通わない宣言」に批判の声も…筑駒→東大出身の父親が考える「息子の将来設計」
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《妊娠中の真美子さんがスイートルーム室内で観戦》大谷翔平、特別な日に「奇跡のサヨナラHR」で感情爆発 妻のために用意していた「特別契約」の内容
NEWSポストセブン
米国からエルサルバドルに送還されたベネズエラのギャング組織のメンバーら(AFP PHOTO / EL SALVADOR'S PRESIDENCY PRESS OFFICE)
“世界最恐の刑務所”に移送された“後ろ手拘束・丸刈り”の凶悪ギャング「刑務所を制圧しプールやナイトクラブを設営」した荒くれ者たち《エルサルバドル大統領の強権的な治安対策》
NEWSポストセブン
沖縄・旭琉會の挨拶を受けた司忍組長
《雨に濡れた司忍組長》極秘外交に臨む六代目山口組 沖縄・旭琉會との会談で見せていた笑顔 分裂抗争は“風雲急を告げる”事態に
NEWSポストセブン
中居正広氏とフジテレビ社屋(時事通信フォト)
【被害女性Aさん フジ問題で独占告白】「理不尽な思いをしている方がたくさん…」彼女はいま何を思い、何を求めるのか
週刊ポスト
食道がんであることを公表した石橋貴明、元妻の鈴木保奈美は沈黙を貫いている(左/Instagramより)
《食道がん公表のとんねるず・石橋貴明(63)》社長と所属女優として沈黙貫く元妻の鈴木保奈美との距離感、長女との確執乗り越え…「初孫抱いて見せていた笑顔」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 中居トラブル被害女性がフジに悲痛告白ほか
「週刊ポスト」本日発売! 中居トラブル被害女性がフジに悲痛告白ほか
NEWSポストセブン