話題の新刊『「規制」を変えれば電気も足りる』(小学館101新書)を上梓し、お役所が差配する「規制」の裏のウラまで知り尽くす元経産省キャリア官僚の原英史氏(現・政策工房社長)が、「おバカ規制」がどう作られるかの仕組みを解説する。
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国の法令の名前を見ると、「××法」「××令」「××規則」とか、いろいろとあってややこしい。まず、国の法令は、「三段重ね」の構造になっていることを理解しておくといい。
「法律」→「政令」→「省令」の順に下にいくほど、いわば“細則”。つまり細かいことを決めていて、決めるための手続きも軽くなる。
■法律
ご存じの通り、国会で決める。名前の末尾が「××法」か「××法律」だったら法律。
■政令
国会ではなく、政府が決める。だから「政令」と言う。手続きは、閣議決定。つまり全大臣がサインして、政府全体として決定する。末尾は「××施行令」か「××政令」。
■省令
厚生労働省や文部科学省など、特定の「省」が決める。手続きは政令よりさらに軽くて、その省の中だけで決めてよい。他の役所が異を唱えていても関係ないわけだ。末尾は「××施行規則」か「××省令」。
「電子政府総合窓口」(www.e-gov.go.jp)の「法令検索」のページを見ると、いろんな「法律」「政令」「省令」の条文を見ることができる。
さて、以上の説明で、「要するに『法律』が一番大事なんだな」と思ったかもしれない。これは、本来は正しいはずだが、実際には大間違いになることがある。本当に大事なことほど、軽い手続きの「省令」で決められていたりするのだ。
また「省令」のさらに下に「通達」というものがある。これは、××省の局長や課長らの名前で出した、ただのお手紙みたいなもので、厳密には法令ではない。通常、業界団体や自治体に向けて、「法律のこの規定は、こう解釈・運用せよ」などとルールを定める内容だ。
だからといって、重要度が低いと思ったら大間違い。通達は省令よりもっと大事だったりする。そして当然のことながら省令と同じロジックで、出すための手続きは軽くて済むため、役所の意志が反映されやすい。昔から「通達行政」という言葉があるが、むしろ「大事なことは通達で決められている」のである。
例えば、2010年2月に全国のオフィスに大騒動を引き起こした、「派遣社員は電話に出るな」という規制は厚生労働省が出した「通達」なのだ。