国内

遺体発見で動揺した自衛官 災害救助の初志思い出し立ち直る

 SAPIOは東日本大震災と闘う自衛官とその家族、OBたち120名に対して取材を敢行した。ここにあるのは、日本人が忘れてはいけない「3.11後」を支えた人々の「奮闘の記録」である。今回は釜石市で災害救助に従事した陸上自衛隊第9師団第21普通科連隊の菅原徹 3曹の話を紹介する。

 * * *
「3月12日の早朝、釜石市に入りました。釜石駅前から、中隊ごとに分かれ、各自が長い棒を持って横一列に並び、水浸しの町の中をひたすら進みました」

 菅原3曹が初日に発見したのは、要救助者ではなく遺体だった。

「道に横たわっていた80代の女性、そして車の中に乗ったままの60代の男性のご遺体を見つけました。もちろん、遺体を収容する訓練など受けていません。あまりのことに、どう言葉にしていいかわかりませんでした。しばらく呆然としていたんだと思います」

 菅原3曹が自衛隊を目指したのは、阪神・淡路大震災や雲仙普賢岳の噴火の際、出動した自衛隊をテレビで見ていたからだった。

「やりたいと思っていた災害救助を、まさに今、しているじゃないか。そう日々自分に言い聞かせていました。志望動機を確認することで、何とかショックから立ち直れたんだと思います」

 第21普通科連隊では、炊き出しなど、避難所への援助も行なった。だが彼らは炊き出しに手をつけなかった。あくまでこれは被災者のため。乾パンや缶詰で耐えた。菅原3曹たちが、温かいご飯とおかず、味噌汁のフルメニューを被災地で口にした時は、震災からすでに1か月が過ぎていた。

※SAPIO2011年8月17日・24日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト