土壌や水、稲わらにまで放射能汚染が発覚するなか、米は安全といえるのだろうか? セシウムによって汚染された米が、私たちの食卓に入り込む可能性は? そもそも、農家が収穫した米はどのようにして食卓に届くのだろうか。米の流通に詳しい岐阜大学の前澤重禮教授はこういう。
「農家が収穫したお米をその地域のJAが集荷し、JAから米を扱う流通業者に流れ、スーパーや米店などの小売業者の店頭に並ぶというルートが基本です」
2004年に食糧法が改正されるまでは、このJAを通すルートが米流通のほぼすべてだったが、最近では別のルートも増えている。
農家が卸業者に直接販売したり、インターネットを使って消費者にそのまま届けたり、ルートはさまざまだ。
そして消費者の手に届く米には、JAS法に基づいて「精米年月日」や「産地」が表示され、それを見て消費者が米を選ぶことになる。
「産地は都道府県名まで記載することが法律で義務づけられています。さらに昨年10月から米トレーサビリティ法が施行され、米を扱う業者は取引記録を保存し、産地情報を取引先に伝えることが決められています。
何か問題があった場合には、その取引記録からさかのぼり、違反した業者が罰せられるようになりました。したがって業者が産地偽装した米や、基準値を上回った米を流通させることはないでしょう」(前出・前澤さん)
ただし、この米トレーサビリティ法はあくまで“性善説”に立った規制。2008年には、農薬に汚染されたベトナム産のうるち米が「食用米」として転売される“事故米騒動”があっただけに、この米トレーサビリティ法が本当に機能するのかどうか疑問視する専門家もいる。
実際に福島在住の食品ジャーナリスト・吾妻博勝さんはこんな現場を目撃している。
「先日、福島県産の米を扱っている県内の卸売業者の店舗に行ったんですが、どういうわけか店内に『新潟産』と書かれた米袋が大量に積まれていたんです」
複数の産地や品種が混ざっている「ブレンド米」の不安もある。JAS法で、産地表示が義務付けられているのは「産地」「品種」「産年」が同一の米のみ。ブレンド米は、「国産米」か「輸入米」かを記すだけでよく、都道府県名の記載はあくまで任意となっている。
※女性セブン2011年8月25日・9月1日号