ネット界注目の芥川賞作家・西村賢太氏の連続インタビュー最終回。震災、原発、そして震災後の日本社会をどう見ているのか。(聞き手=神田憲行)
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--震災、原発という大きな問題は、西村さんのような私小説家にも影響を与えますか。
西村:全くないです。作家はこういうときは書斎なんかいないでアクティブに被災地にとんで自分の目でいろいろ確かめるべきだ、という意見もありますが、僕自身は興味ないですね。
そのために被災地に足を運んでる人も、言葉は悪いけど、ネタ取りにいっていると思うんですよ。しょせん、東京から出版社のカネ貰って行ってるんですから。ネタ取りと、ポーズと自己満足のために被災地に行っているとしか僕には見えないですね。(担当編集者「今回の『寒灯』の表題作は地震直後1週間で書き上げたのです」)
そうそう。全くなんの影響も受けていない。同じものが書けたのが僕には自信になりましたね。震災があろうとなんだろうと、まったく同じ。
--人生観にも影響与えないですか。
西村:いっときはどうなるのかなあとは思いましたけれど、今はのど元過ぎれば熱さ忘れるってやつで(笑)。たしかに東京に地震が直撃して、目の前に何人も死者を目撃したら、変わるかもしれませんが……。震災が出てくるような小説はまったく考えられない。僕は読みたいと思わないですねえ。
新聞は取ってないしテレビも震災で壊れたからニュースに疎いんです。さっきサウナに行って、そこの新聞で原田芳雄が亡くなったことを知ったぐらいですから。テレビなんてなきゃないでいいんですよ。このさき10年ぐらいは僕はずっと「秋恵」ものを書いていると思いますよ。(了)