米議会の債務上限引き上げを巡る混乱と米国債の格下げをきっかけに起きたドル安、株安、債券安。その後も急騰、急落を繰り返すジェットコースター相場が続いている。
ジェットコースター相場の発端を作った「格付け会社」とは一体どんな会社なのか。
実は、米国債の格下げを行なった格付け会社S&Pに、米国債格下げに関する情報を公表前に一部の金融機関にリークしていたとの疑惑が浮上している。証券取引委員会(SEC)による見直しが行なわれ、下院での公聴会まで検討されるスキャンダルに発展している。
米ケーブルニュースのフォックス・ビジネスが明らかにした銀行幹部の証言によれば、S&Pが8月5日の米国債格下げ発表に先立って銀行幹部と会合を開き、議論していたという。格下げ発表前に取引が急増し、大量の売りが出されたことも、疑惑に拍車をかけた。またS&Pは、格下げにあたって米国の財政赤字を2兆ドルも大きく見積もっていたことを認めた。
格付け会社の研究で知られる本山美彦・大阪産業大学学長は、「事実としても驚かない」という。
「格付け会社と金融機関が裏で手を結び、利益を共有しているのではないかとの疑いはこれまでもありました。金融機関が売りたい商品に高い格付けを与えたり、一方で格下げしてわざと不安を煽ったりもする。そもそも格付け会社の実体はただの民間会社で、格の上げ下げは投機を助長する口実に過ぎない」
破綻したサブプライム・ローンの関連商品は軒並み高格付けだったが、それらは金融機関の主力商品でもあった。
金融ジャーナリストの小泉深氏は、今回の格下げも同様だと見る。
「米国債の格付けが下がっても、損をするのは日本をはじめとする米国債保有国だけで、米投資銀行や投資ファンドにとっては、ドル売りで儲けるチャンス。ハゲタカが跋扈(ばっこ)できる環境を作る急先鋒が格付け会社だということです。
そもそも多くの格付けは、その格付けを受ける会社や商品の販売元自身が格付け会社に依頼して作ってもらうものであり、それが公正・中立であるかは疑わしいものです」
※週刊ポスト2011年9月2日号