原発事故から12日後の3月23日、自身のブログに「批難覚悟で…」と題した脱原発の考えをアップした現役中学3年生アイドル・藤波心(14)。それまでファンとの交流の場であったブログは、賛否両論のコメントが殺到し、凄まじい勢いでアクセスされた。その数は、3日間で300万PVという異例のものだった。その彼女に、当時の心境を聞いた。
――ブログの反響に気づいたのはいつのことでしたか?
藤波:ブログにあの原稿をアップしてから2日後でした。気がついたら承認待ちのコメントが700件もあって、初めは何かの間違いかと思いました。ブログの管理人さんから事務所に電話がかかってきて「大丈夫ですか?」って。通常、タレントのブログへのコメントは、誹謗中傷などが含まれていることがあるので管理人さんがすべてチェックしてから載せているんです。でも、私はありのままを知りたくて、管理人さんにお願いして、その作業も自分でやるようにしています。
――それって精神的にすごくツラい作業なのでは?
藤波:7割くらいは私への応援や賛同のコメントなんですが、残りは批判のコメントですからね、正直、読むのがキツいものもあります。「芸能界引退しろ」とか「原稿を消して謝罪しろ」とか、中には「ブサイク」だとか(笑い)。でも、そういったコメントも消さずにそのまま載せるようにしました。賛同してくれてるコメントだけだと、自分にとってきれいなものになっちゃうなと。それと、一個人のブログではあるけど、いまの日本の姿をそのまま残しておきたくて。
――いちばんツラかったコメントは?
藤波:私が小学校のころからイベントに来てくれていたファンの方からの「心ちゃんが、そんなこという人だとは思わなかった」「アイドルなんだから水着を着て笑っていればいいのに」といったコメントを見たときはかなりヘコみましたね。そういうこともあって、4月の中旬くらいまでは、取材も全部断っていて、ひきこもり状態になっていました。
――ブログのコメント以外に、批判する人たちから反応は?
藤波:事務所に、たくさんのクレームがきました。毎日のように、電話がかかってきて、ファックスもくるし、直接、訪問される方もいたそうで、担当者は「ノイローゼになりそうだった」といっていました。先ほど、ブログのコメントはすべて載せるといいましたけど、どこで調べたのかわかりませんが、私の個人情報などが書かれたコメントなどもあって…そういったものは削除しているんです。
――怖くないんですか?
藤波:すごく怖いです。今回のことと関係あるかどうかはわからないんですが、1度、自宅の敷地内に夜、不審者が侵入してきたことがありました。それがきっかけで、お母さんが庭に監視カメラをつけました。
――そんな怖い思いまでして、脱原発の主張を続けるのはなぜ?
藤波:それは、私が頑固だから(笑い)…。というのもあると思いますが、やっぱり、私の意見に賛同してくれる方たちの存在が大きいです。その中には、ソフトバンクの孫正義さんや、ラサール石井さんなど著名な方たちがいらっしゃいます。批判してる方たちはどこの誰だかわからない匿名の人が多い。そう考えると、落ち込んでるのもアホらしく思えてきて。
それに、批判コメントの中にも、原発はなぜ必要なのかと明確に意見を述べている方もいて、勉強になったりするんですよ。何より、原発の問題は、日本国民みんなが考えていかないといけない問題なので、自分の意見を抑える必要はないと思ってます。
【藤波心(ふじなみ・こころ)】
1996年11月22日、兵庫県生まれ。特技は歌うこと、ダンス、ポージング。ファッションショーのモデルをきっかけに、現在の事務所に所属。グラビアや映画などで活躍。今年5月、『間違ってますか? 私だけですか? 14才のココロ』(徳間書店)を出版。
撮影■田中麻以