後半戦が始まって以降、湿っていた巨人の打棒が復活した。しかし、一部からは「東京ドームの打球が飛ぶようになった」との声も。あるスポーツ紙記者が興味深い証言をする。
「東京ドームのボールボーイと話したとき、“審判に渡すボールが生温い”といっていました。温かいと飛ぶ、というのは球界では定説ですよ」
ゴルフボールではよくいわれる話だが、理論上は温度が高い方が飛距離は伸びる。これはボールの反発係数(跳ね返りの度合い)が増すためとされるが、野球のボールでも理屈は同じだという。あるスポーツメーカー開発担当者が語る。
「ボールの中心部分は温度に比例して膨張するので、反発係数は高まります。ただし、ゴルフボールほどではありませんが……」
温度を上げることによって、ボールが乾燥している可能性もあるという。東大大学院工学系研究科(航空宇宙工学専攻)の河内啓二・教授は、科学技術振興機構のHPに次のような見解を寄せている。
「昔、米国で相手チームのボールが飛ばないよう、冷蔵庫で冷やしてから使ったチームがある。もちろん違反だが、こうするとボール内部の湿度が上がる。湿気は硬球に使われている毛糸やゴムの反発力(弾性)を落とすため、飛距離は伸びない」
逆にいえば、ボールを温めれば内部の湿度が下がり、反発力が増すという指摘である。この点をドームを運営する(株)東京ドームにぶつけると、
「ボールは連盟が管理しており、通常のドーム内の室温での部屋に置いてあります。温めたり、冷やしたりはしていません」
との説明だったが、夏場の暑さに加えて節電の影響で、ドーム内の気温が上昇しているのは事実。それが、統一球を“飛ぶボール”に変身させている要因なのだろうか。球場関係者はこういう。
「節電の影響でドームの温度はかなり上がっている。自然とボールの温度が上がっている可能性はある」
※週刊ポスト2011年9月2日号