新聞・テレビの報道によると、野田佳彦・財務相が次期首相最有力で、民主党代表選の焦点は自公との「大連立」だそうだ。だが、大メディアが報じる代表選の情勢は大嘘である。代表選の中心にいるのは、実は小沢一郎氏だ。
初公判の日程が決まった日、小沢氏は民主党有志の勉強会で、こう訴えた。
「政党の公約を国民に示し、国民がそれを了とすることで、政党と国民との契約が成立し、政権が成立する。この政権公約、マニフェストは、主権者たる国民との契約だから非常に重い」
この日の勉強会には衆参の民主党議員146人が参加し、「小沢健在」を見せつけた。参加した側近議員が語る。
「勉強会には小沢グループの幹部16人がわざと出席を見合わせていた。小沢さんは『本当は160人以上だな』と手応えを感じている様子だった」
小沢氏は週3回、若手議員と会合を開いているのをはじめ、個人事務所を議員であれば誰でもアポなしで入れるように開放している。そこには連日、思わぬ珍客が顔を見せている。
「小沢事務所には、代表選に意欲を持つ議員が次々にお忍びで訪れている。しかし、小沢さんは熱心に意見を聞いているだけ。今はマニフェスト順守、増税反対という民主党の原点回帰に賛同する勢力を250人ほど固め、勝ちを確実にしてから候補者を絞るつもりです」(同前)
小沢ガールズの一人が事務所を訪れたとき、ちょうど代表候補の一人、馬淵澄夫氏が小沢氏と会談していた。小沢氏が声をかけた。
「○○ちゃん、代表選は誰にするんだ?」
「もちろん、馬淵さんです」
そう社交辞令を返すと、小沢氏は、「お前、この間は原口(一博)だっていってたじゃないか。いい加減だな」と大笑いしたという。
民主党内で「本命は野田」という者は野田グループくらいで、いまや「小沢の意中の人」を探る情報戦が繰り広げられているのである。小沢氏のブレーンはこう読み解く。
「小沢さんの目的は党全体をもう一度、政権交代の初心に立ち返らせることだ。野田さんにも側近を通じて『増税路線を凍結し、マニフェストの原点に戻るなら支援も可能だ』と再三、説得してきた。結局、野田さんは踏み切れなかったが、執行部派の有力候補である前原誠司氏が増税慎重論に転じたのは小沢氏の意図を理解したからだ」
ただし別の小沢側近は、「前原はない。オヤジの本命は、まだ名前の出ていない男だ」と、もったいつけて語った。
※週刊ポスト2011年9月2日号