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女性自衛官の「お話伺い隊」 自家製漬物で被災者の心を開く

 SAPIOは東日本大震災と闘う自衛官とその家族、OBたち120名に対して取材を行なった。ここにあるのは、日本人が忘れてはいけない「3.11後」を支えた人々の「奮闘の記録」である。今回は岩手県へ派遣された陸上自衛隊第9師団の女性自衛官たちの取り組みを紹介しよう。

 * * *
 岩手県へ派遣された陸自第9師団では、看護やカウンセリングの知識と技能を持つ女性自衛官たちが、被災者のストレス軽減と女性のニーズ把握を目的に「お話伺い隊」を編成。4月19日から7月末までに、依頼のあった避難所24か所を巡回した。

 発災当初、避難所では誰もが口を重く閉ざしていた。そんな被災者たちも、いつしか「伺い隊」にはポツリポツリと心境を語るようになる。その“秘密兵器”は「漬物」だった。

「東北はお茶受けに漬物を食べることが多いので、手ぶらで行っても話が盛り上がらないだろうなと思って、漬物を持参したんです。これがすごく喜ばれました」(金濱幸子1尉)

 最初は、自衛隊の非常用糧食である缶詰の漬物だった。佐々木貴子2曹は、「こんなに喜ばれるなら次回は自分で漬けた漬物を持って行こう」と思ったという。赤カブやきゅうり――段ボール1箱も持って行った。

 息子と孫を亡くした70代の女性は、息子夫婦が津波に襲われた時の惨状を思い出し、「なんでおれだけが生き残っちまったんだべ。おれが死ねばよがっだ」と泣いた。そんな時、「伺い隊」のメンバーも貰い泣きをしてしまう。

 派谷てい子曹長は涙を拭きながら、「まだ神様が『来い』って言ってないんだから、ご飯をたくさん食べて長生きしましょうね」と励まし、漬物を差し出した。すると女性は「そうだよね!」と笑みを浮かべてくれたという。

※SAPIO2011年8月17日・24日号

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