なでしこジャパンのW杯優勝には、「集団知能」が大きく関係していた。そう語るのは、『ホンマでっかTV!?』(フジテレビ系)でもお馴染みの脳科学者・澤口俊之氏。脳科学的観点から、なでしこジャパンの強さの秘密を読み解く。
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なでしこジャパンの優勝で、なでしこフィーバーが続いていますが、このフィーバーには、脳科学あるいは進化学の観点から興味を持てる点があります。それは、「リーダーの本質」を示してくれたということです。
なでしこジャパンの選手たちが個性的で優秀であることは間違いありません。しかし、それだけでは優勝はもとより上位にもはいれなかったはずです。やはり佐々木則夫監督の采配があればこそといえます。
佐々木監督についてはPK戦の前に選手の笑顔を誘ったとか、いつも前向きでポジティブな言動をするといったことが報じられてきましたが、それらはいわば指導にあたってのテクニックに過ぎません。
より重要なのは、集団にはそれぞれに特有の知能があり、その「集団知能」を高めることがリーダーの基本的役割であるという視点です。
集団知能とは、個人の能力ではなしえないものを集団の能力で達成できるようにする知能です。ごく簡単な言葉でいうと「チームワーク」といえるかもしれません。どんなに優れた個人がたくさんいても、その良さや能力が引き出されなければ集団としての勝利や報酬を手にすることはできません。
チームの個々のメンバーの能力の単純な平均値や総和、あるいは、最も優秀なメンバーの能力などでは集団の能力は推し量れないことがわかっています。ゆえにリーダーの資質がとても重要なのです。「なでしこジャパン」が優勝できたのは、佐々木監督がその集団知能、すなわちチームワークを高めてきたことが大きいといえます。
集団知能を高めるためにリーダーに求められる最低条件は、全てのメンバーから信頼されていること。明確なビジョンとぶれない信念を持つこと。そして、まさに「あきらめない」ことです。
佐々木監督がこれらの条件を満たしていたからこそ、「なでしこジャパン」は人間集団のプラスの本質を体現し、優勝の栄冠に輝いたのだといえます。
※女性セブン2011年8月25日・9月1日号