ネオンの光に包まれた大阪の夜。この時期、盛り場にたむろする少女たちに声をかけて回る「ナニワのオバちゃん」が現われる。ボケとツッコミを巧みに交えて厚かましく喋りかけるオバちゃんたちに、少女たちは不思議と心を開いていく。そうした会話が、少女の人生を救うこともある。2年前の夏休み、有松孝子さん(61)と大平康代さん(62)は夜回り中にミニスカート姿の少女を見つけた。以下はジャーナリストの鵜飼克郎氏が取材したエピソード。
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「お腹にストールをぐるぐると巻いていたんです。一目で妊娠しているとわかりました」(有松さん)
案の定、その少女は子供を身ごもっていた。しかし、相手の男は妊娠を知ると逃げてしまい、親にも友人にも相談できず夜の街で寂しさと不安を紛らわせていたのだという。有松さんは少女と携帯電話の番号を交換し、「何かあったら連絡しておいで」と別れた。
「数日後に“凄く怒られたけど、お父さんに話して中絶することにした。あん時にオバちゃんが声をかけてくれなかったら、どうなってたか……”と電話があったんです。その後は他愛もないことで連絡をくれるようになりました」(同前)
※週刊ポスト2011年9月2日号