民主党代表選が本格化する中で、またぞろ政・官・報から「反小沢」の大合唱が巻き起こっている。この“恒例行事”を、「日本の歪んだ民主主義政治の象徴である」と喝破するのは、長年にわたって日本政治を研究し続けてきたカレル・ヴァン・ウォルフレン氏(アムステルダム大学教授)だ。
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有能な政治家を抹殺しようという動きがいかに愚かなことかを知らしめるため、国民の代表たる国会議員はまとまった行動を取るべきだ。そのためには、小沢氏本人の行動も重要となる。
現在の小沢氏は、非常に難しい状況にある。どんな行動をしてもメディアから否定的な解釈を受けるだろう。主流のメディアにはこれまで同様、しばらく出ないようにして、ネットメディアなどで発信するしか方法がない。
おそらく小沢氏は、大メディアに対して怒りを感じているだろう。しかし、政治家としてはその怒りを表わすべきではない。小沢氏に必要な行動は、国民と民主党の議員たちに政治改革の原点を冷静に説くことしかない。実際、私との対談での小沢氏は実にチャーミングであった。
彼は党内の誰よりも、民主党の力学を理解している。幹部たちの強みも弱みもよく知り、自分の大局的なビジョンにどこから反対の声が上がるかもわかっているはずだ。
日本の政治を官僚の手から取り戻すという民主党が掲げた改革は、こうした辣腕政治家にしかできない。菅首相、前原誠司氏、岡田克也氏といった、官僚やメディアの顔色をうかがうばかりで、政治の方向性を打ち出せない政治家の主導下ではそれは期待できない。小沢氏は、それができるのはもはや自分しかいないと自覚すべきである。
ただ、その小沢氏が党内で力を発揮する体制をつくるために、民主党の議員たちには、告訴を取り下げさせて小沢氏の裁判をやめさせる行動を取るべきだと提案したい。
そんなことをすれば大メディアは、「司法への政治介入だ」と批判するだろう。だが、それに対して民主党議員たちは、「我々は国民に選ばれた選良としての権威を行使し、官僚による間違い、司法を貶める行為を止めなければならない。政治を統治するために我々が必要とする人物を、馬鹿げた理由で転覆させようとするあなた方こそ腐敗している」と反論し、国民に判断を委ねればよい。
※週刊ポスト2011年9月2日号