軍用機総数約2450機を保有する中国人民解放軍空軍。その戦闘機といえば、ほとんどがロシアからの輸入で、米軍の戦闘能力には到底及ばないものと思われていた。しかし、近年、中国の戦闘機開発は“革命的”に飛躍し、米空軍の戦闘能力を凌ぎつつあるという。産経新聞ワシントン駐在編集特別委員の古森義久氏が報告する。
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中国がその空軍力を大増強していることは、もう疑いの余地はない。だがいくら個々の戦闘機や爆撃機の性能をあげても、各機の全体の数を増しても、なお一定のカテゴリーでの戦闘機対戦闘機、迎撃機対迎撃機という実際の戦闘となると、アメリカや日本の空軍力にはまだまだ劣るのではないか。
この点は国防総省の元中国部長で、いまはワシントンの民間大手研究機関の「アメリカン・エンタープライズ・インスティテュート(AEI)」の中国問題研究員のダニエル・ブルーメンソール氏に問うてみた。
「同じ種類の軍用機同士が正面から対等な条件の下で戦うという想定は現実には難しいですね。実際に戦闘となれば、中国側の戦闘機などは大陸の根拠地に近く、通信その他でも有利です。一方、米軍機は自軍の基地からははるか遠くまで出動せねばならない。とくに戦闘機隊は戦場近くでの適切な布陣が簡単にはできない。
遠隔地での兵站作業、航空機の飛行距離、付近の基地へのアクセスなどという諸要因が米中空軍戦闘の内容や結果を左右するのです。万が一、米中両軍機が同じ距離を飛び、同じ条件で正面から一対一の形で戦うならば、それは米軍が優位に立つでしょう。でも現実はそんな状況を許しません」
きわめて理にかなった説明である。
※SAPIO2011年8月17日・24日号