カード業界で「永久不滅ポイント」や「サイン(署名)レス」などのヒット企画を実現したクレディセゾン社長の林野宏氏は、潰れかけていた同社を立ち直らせた実績の持ち主。「世の中には万有引力のように運とツキの法則があると思う」と語る林野氏は、どのようにして運を引き寄せたのだろうか?
「当時、日本の企業社会は長らく男尊女卑が続いており、一流企業の女性はいくら能力があっても結婚すれば寿退社という目で見られていた。しかし、彼女たちの中には『自分を極限まで高めたい』というハングリー精神を持った人が多くいました。
そこでそういった女性を中途採用して、全国のセゾンカウンターにショップマスターとして派遣し、社内で競い合ってもらうことにしたのです」
予想を超えた働きぶりで、最初の年に獲得目標の120万枚を達成できた。彼女たちは、林野氏が与えたチャンスにしっかりと応え、運を呼び込む形で恩返しをしてくれたといえるだろう。運は刻々と流転するものであるため、ずっと自分の元にとどまってくれるものではない。これは個人も企業も同じである。
「私は間近でセゾングループの成長、停滞、そして衰退を見てきました。いま世の中で注目されている企業も、いずれは業態自体が顧客に飽きられてしまう可能性があります」
少しでも運が逃げるのを防ぐ方法は、いたってシンプル。それは、「成功をひけらかさない」ことだ。
「人間は一度成功すると驕り高ぶるものです。社内だけでなく、取引先などでも成功をひけらかし、相手を見下し、自ら努力することを忘れてしまう。せっかく掴んだ運もあっという間に逃げていってしまいます。これが組織が衰退する最大の要因です」
やはり他者の協力が得られなくなってしまえば、運には見放されてしまうのである。
※週刊ポスト2011年9月2日号